第4.お墓の管理と相続でトラブルにならないための2つのポイント
1.はじめに
墓の管理者はどのようにして決まるのでしょうか。
特に取り決めもしないまま、先祖代々の墓を所有し、長男が管理を続けているというケースはよくあると思います。しかし、もしも親族間で管理を希望する人が複数人あらわれたときに問題となります
2.祭祀財産と遺産との違い
故人の財産は、相続人に承継されるのが原則ですが、例外として、祭祀財産(家系図、祭具、墳墓)は、相続人ではなく、祭祀を承継する人が引き継ぐことになります。
そのため、例えば、遺言書で、全ての遺産を長女に相続させると決めていたとしても、墓は遺産ではありませんので、墓については長男が引き継ぐということも、理論的にはできます。
したがって、遺産と墳墓などの祭祀財産は別物ですので、相続が発生した場合には、両方を取り決めないといけません。
3.祭祀財産の管理者を決めるルール
法律では、墳墓の所有権について、被相続人が生前に指定していれば、その指定されていた人が祭祀承継者となります。
しかし、指定がなければ、慣習に従って先祖の祭祀を主宰すべき者が承継すると決められています(民法897条1項)。
そして、この慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が祭祀承継者を定めます(民法897条2項)。
被相続人による指定や慣習が明らかであれば、そもそも、もめることは少ないでしょう。
これらの取り決めや慣習がない場合に、だれが祭祀承継者として適しているのか家庭裁判所で審理がされます。
具体的には、承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係、承継候補者と祭具等の間の場所的関係、祭具等の取得の目的や管理等の経緯、承継候補者の祭祀主宰の意思や能力、その他利害関係人全員の生活状況および意見、死者に対する心情などを総合考慮して、被相続人が生存していたのであれば、おそらくこの人を祭祀承継者に指定したであろうという人を指定します。
4.祭祀承継者の指定を求める手続
祭祀承継者を決める家庭裁判所での手続きは、遺産分割の調停や審判とは別の手続きになります。
もし話し合いが成立しない場合には、遺産分割調停とは別に、祭祀承継者指定の調停・審判の申立てをする必要があります。
なお、被相続人による指定や慣習が明らかであるのに、一方の相続人が仏具などを引き渡さない場合などには、家庭裁判所で指定を待つことなく、民事訴訟において引き渡し請求をしていくことができます。
5.遺骨の管理者は
遺骨については、諸説ありますが、墓と同様に祭祀承継者が管理をしていくという考えが有力です(最判平成元年7月18日判決)。
遺骨の引き渡しを受けたいときは、自らが祭祀承継者にふさわしいことを主張し、家庭裁判所で指定を受け、引き渡しをうけることになります。
6.トラブルを避けるための2つのポイント
遺言書を書く
祭祀承継を希望する相続人が複数いる場合、遺言書で、どちらが承継するか取り決めをしておけば、故人の意思が優先されるので、もめることはありません。
また、祭祀承継者に多めに遺産を渡すことで、経済的にも安定し、祭祀を主宰していくことができるでしょう。
法要費用などの祭祀に関する支払いは、原則祭祀承継者が負担することを受け入れる
祭祀財産は、遺産ではないので、相続人の同意がなければ、祭祀に関して必要な支払を遺産から控除することはできません。
そのため、祭祀を承継した人は、その負担で、祭祀を主宰しなければなりません。
祭祀の承継を希望する場合、この点について、認識が異なっていると、後で、他の相続人とトラブルになることがあります。祭祀は、自らの意思で執り行うものですから、その負担は受けいれましょう。もし、それが困難であれば、祭祀承継を他の相続人にまかせることも考えてみましょう。
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