第17.遺言書による名義変更・相続手続の流れ

1.遺言書は何の役に立つのか

(1)法定相続分を変更する効果

 本来、相続人は、遺産を法律で定められた「法定相続分割合」によって分配することになります。

 

 しかし、遺産の分配について、遺産を残した故人が分配の割合を指定するのであれば、故人の指定が優先します。

 

 遺言書によって定められた相続人の相続割合を「指定相続分」といいます。

 

 遺言書は、通常、指定相続分を定め、法定相続分を変更するために作成されます。

 

 

(2)名義変更を簡易化する効果

 不動産を相続人の1人に相続させるという遺言書を作成しておけば、その相続人は、遺産分割協議書を作ることなく、一人で名義変更をすることができます。

 

 このように、遺言書で取得者を定めておくことにより、名義変更手続を簡略化することができます。

 

2.検認手続

(1)自筆証書遺言

 遺言書は、故人の死亡によって、その効果(財産の移転)を発揮します。しかし、法律は、死後の相続人間の紛争を避けるため、遺言書の状態を確認し、記録化を行う検認手続を経ることを相続人に義務付けています。

 

 検認が必要なのは、故人が自筆で作成した遺言書です。もし、検認の手続を得ないと、過料が定められています(民法1005条)。

 

(2)公正証書遺言

 公証役場で作成した遺言書は、その形状が公証役場できちんと記録されているので、検認は不要とされています。

 

 そのため、相続人の手続負担は、公正証書遺言の方が少ないです。

 

3.遺言書で遺産を多く受け取ったときの預金の名義変更

(1)遺言書に遺言執行者の定めがない場合

 遺言書によって、特定の遺産を相続させると指定された相続人は、検認手続を経た遺言書の原本を持参し、金融機関に払い戻しを請求することになります。

 

 遺言書の記載から、あなたが当該遺産を取得することが明確であれば、他の相続人の同意がなくても、払い戻しをすることができる場合もありますが、通常、金融機関は、のちの他の相続人とのトラブルを避けるため、他の相続人の印鑑も求めてくる、もしくは、「遺言執行者」の選任を求めてくることがあります。

 

 遺言執行者とは、相続人全員の代表として、遺言書の内容を実現する執行人のことで、家庭裁判所が選任してくれます。

 

 遺言執行者を選任するためには、家庭裁判所に対し、遺言執行者を選任するよう申込みをしないといけません。

 

 裁判所から選任された遺言執行者からの払戻請求を行えば、金融機関は応じます。

 

(2)遺言書で遺言執行者の定めがある場合

 あらかじめ、遺言書で遺言執行者を特定の人に指定しておけば、家庭裁判所の選任手続をしないで、その遺言執行者が金融機関で払い戻し手続をすることができます。遺言書で、特定の者が遺産を相続すること、及び、その者が遺言執行者になることの両方を決めておけば、他の相続人の協力がなくとも、その者1人で、預金の解約手続が完結します。

 

 遺言書の内容によっては、簡単に払い戻しができないこともあります。そこで、揉めそうであれば早期に遺言執行者の選任を申し立てることが良いでしょう。また、遺言書で遺言執行者の指定をまだしていない場合には、遺言執行者の指定の遺言書を作成すると良いでしょう。

 

4.遺言書で遺贈されたときの受遺者の預金の名義変更

(1)原則

 相続人でない人に対して、遺言書で、遺産を贈与することを「遺贈(いぞう)」といい、その受取人を「受遺者(じゅいしゃ)」といいます。

相続人が遺産を承継するとき、当事者である故人はすでに死んでいるので、残された相続人が手続の当事者となりますが、遺贈によって相続人でない第三者が受遺者となっている場合、遺産を受遺者に渡すには、相続人と受遺者が協力する必要があります。

 

 例えば、預金については、相続人が解約し、相続人からその金銭を、受遺者に渡すという手続が必要です。不動産についても、相続人と受遺者の両方が法務局に申請して、名義を変えることになります。

 

 現実問題、素直にこの名義変更手続に協力をしてくれる相続人は、そう多くはありません。

 

(2)遺言執行者の選任が有効

 相続人が協力しないときでも、受遺者が手続を進められるよう、受遺者は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます。裁判所が遺言執行者を選任すると、相続人は遺産を処分することができなくなり、遺言執行者が代わりに手続を行うようになります。遺言執行者が1人で預金を解約し、預金をあなたに名義変更します。

 

 裁判所が選任する遺言執行者は、通常、弁護士や司法書士などの法律の専門家が選ばれますので、相続人が反対していても、きちんと手続を進めることができます。

 

5.遺言書により受ける権利が全くないときの対応

(1)遺言書の有効性を争う

 遺言書が無効であれば、遺言がなかった状態に戻すことができます。遺言書の有効性を争うには、遺産分割調停ではなく、民事訴訟を提起する必要があります。

 

 預貯金や不動産の名義が、被相続人のままであれば、遺言書無効確認の訴えを提起します。もし、すでに名義変更や財産の解約が済んでいる場合には、現在の名義人や保管者に対して、所有権移転登記の抹消や金銭の返還請求を行うことになります。

 

(2)遺留分を主張する

 遺留分とは、遺言書によっても奪うことのできない相続人の権利のことです。

 

 遺留分を侵害している遺言書については、相続人や受遺者に対して、遺留分を返還するよう請求することができます。

 

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