介護をした嫁にも相続が可能となる新法「特別寄与制度」とは

特別寄与で介護した嫁が遺産を受け取る

 

相続に関わる規定が約40年ぶりに見直され、2019年7月1日から、「特別の寄与」という制度が創設されました。

 

この制度を簡単に説明すると

相続人以外の親族で、亡くなった人(被相続人)に特別な貢献をした人は、その分が考慮され、相続人に対して特別寄与料を請求できる

 

というものです。

といっても、ピンと来ない方もいるかもしれません。具体的な例をあげて説明すると

 

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義父母(被相続人)の介護を献身的におこなっていた、長男の妻。

しかし、妻自身は相続人ではないため、義父母が亡くなったあとの遺産分割には参加できません。

これまでの苦労を考えて、少しでも遺産の分配をしてほしいと考えた妻は、特別寄与料を請求しようと考えました。

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というケースが考えられます。

実際、同じような内容の相談で弊事務所にいらっしゃった方もおられます。

 

この記事では、特別の寄与制度について、よくある質問をまとめました。

 

Q:そもそも寄与とはなんですか?

A 亡くなった人(被相続人)が生きていたときに特別貢献した相続人に、その度合いに応じて寄与分を加えて相続することです。

 

本来、遺産分割協議を行う場合は、亡くなった人の財産を法定相続分にしたがって分けます。

例えば、母が亡くなって、息子が2人いたとします。また、父は既に亡くなっているとします。

となると、母が残した財産は、息子2人が半分ずつ相続することとなります。

 

一見平等な遺産分割に見えますが、長男が10年以上母と同居して介護をしてきたという事実があればどうでしょう。

長男にしてみれば、10年以上にわたって母の生活を助けてきたのに、何もしていない次男と同じ分しかもらえないのは不平等だと思うのではないでしょうか。

 

こういった、被相続人に対する貢献を考慮して、相続分を増額するのが寄与という制度です。

 

Q:寄与分と特別寄与の違いはなんですか?

A 相続人以外の親族が、寄与分として金銭を請求出来るようになったのが、特別寄与です。

 

旧法・新法いずれにおいても、寄与分は相続人にしか認められていません。

例えば、亡くなった人の子供である長男は、寄与分の請求が認められていますが、その妻には請求権はありません。

日本では、長男が親の面倒を見ると言っても、実際に介護や看護をしているのは長男の妻、というケースがとても多いです。介護をした妻本人には、遺産の寄与分を求める権利が無いというのがこれまでの制度だったのです。

 

従来の規定では、介護・看護を全くしなくても「相続人」でさえあれば、正当に遺産の分割を受けられます。

その一方で、相続人の妻という立場であるだけで、懸命に介護・看護をしていても遺産を受け取れない人がたくさんいました。

相続人の妻が遺産を受け取るためには、養子縁組をしたり、特定遺贈をしたりするなど、特別な手続きを取る必要があるのです。

 

これらの不平等をなくすために、特別の寄与という制度が創設されました。

 

Q:特別寄与者(特別寄与を受ける人)になれるのは誰ですか?

A 亡くなった人(被相続人)の相続人以外の親族です。

 

特別寄与者になるには、

 

①被相続人の相続人以外の親族であること

②被相続人の療養看護に努める等したこと

③その労務により被相続人の財産が維持又は増加したこと

 

などの条件が認められる必要があります。

 

ここでいう親族とは、

 

・六親等以内の血族

・配偶者

・三親等内の姻族

 

を指します。相続人の範囲の詳しい説明に関しては、「第9.相続権を持つ親族と相続順位」の記事を参考にしてください。

 

また相続人に関しては、既に通常の寄与分を受け取る権利がありますので、特別寄与者になることはできません。

 

Q:特別の寄与分を請求するメリットとデメリットはなんですか?

A:メリット⇒これまで遺産を受け取れなかった特別寄与者が、貢献度に見合った金額を受け取れるようになった

  :デメリット⇒権利関係者が増加して、遺産分割が複雑化する恐れがある

 

まずメリットについて、

これまでの規定では遺産を受け取れる立場でなかった人も、特別寄与制度を使えば、お金を受け取れるようになりました。

さらに、非同居の相続人が同居相続人の妻(両親と同居していた長男の妻等)に、これまで以上に配慮して遺産分割をするようになると推測されます。よって、相続人と特別寄与者の間でもめることが減り、よりスムーズに遺産分割協議が進むようになると考えられます。

 

続いて、デメリットについて、

特別寄与者が遺産分割協議に間接的に関与するようになるため、権利関係者が増加することになります。

結果的に、遺産分割協議の内容が複雑化してしまう可能性があります。

 

メリットの部分には、「遺産分割がスムーズになる可能性がある」とあり、デメリットの部分に「遺産分割が複雑化する可能性がある」とあり、混乱されるかもしれません。

こちらに関してはケースバイケースであり、特別寄与があることで相続が好転する事案と悪化する事案があります。

ご自身の場合はどうなるか、少しでも不安に感じられた方は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめいたします。

 

Q:特別の寄与分の請求について、注意しておくべきことはありますか?

A:特別寄与分の請求は、相続開始および相続人を知った時から半年以内と相続開始から一年以内のいずれか早い日までに行わなくてはなりません。

 

特別寄与料の支払いについて、各相続人との間で意見が折り合わず、協議が整わない場合は、特別寄与者は家庭裁判所に対してその審理とに代わる処分を請求できます。

 

ただし、請求には期間制限が定められているので、十分注意してください。

 

Q:受け取った特別寄与には相続税が課税されますか?

A:課税されます。

 

特別寄与者は、相続人から受領する特別寄与料を被相続人から遺贈により取得したものとみなされます。

よって、相続税が課税されます。

この際、兄弟姉妹や代襲相続人以外の孫養子等と同様、二割加算の対象となります。

 

特別寄与者は、特別寄与料を受け取ったら、相続税の申告義務が発生したことを知った日から10ヶ月以内に相続税の申告・納税を行わなくてはなりません。

 

また、相続人が特別寄与者に対して支払う特別寄与料は、当該相続人の課税価格から控除されます。

 

Q:弁護士に特別寄与の相談をすることはできますか?

A:可能でございます。相続のご相談は2回目まで無料でお受け付けします。

 

弊事務所は、相続でお悩みの方が多数ご相談に来られます。既に親族が亡くなられた相続当事者の方はもちろん、将来の相続を円滑に進めたいと事前のご相談に来られる方もいます。

 

また、実際に特別寄与でご相談いただき、弁護士が介入したことで寄与料を受け取られた方もおられます。

(詳細については、こちらの「No.90 女性・相談内容:特別寄与 ⇒新法1050条の特別寄与制度を利用して、特別寄与料が認められた事例」の記事をご確認ください。)

 

ほとんどの方が「相続は穏便に進めたい」と思っておられますが、それと同時に「でも被相続人への貢献度が高い自分は、法定通りの遺産分割では納得できない。」と思ってらっしゃる方が多いのも事実です。

 

弁護士に相談頂ければ、法的に公正な遺産分割をご提案できるだけでなく、特別寄与料に関しても対応可能です。

特に特別寄与料については、請求の期限が決められています。

少しでもお悩みであれば、お気軽にご相談ください。連絡先は下記のバナーにございます。

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