第21.相続時に親子関係や認知を裁判で争うポイント

1.戸籍制度と相続手続の関係

戸籍は、人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するものです。

 

 戸籍の記載は、事実上、真実と推定されます(最一小判昭28.4.23民集7巻4号396頁)。したがって、戸籍に名前がなければ、その者の署名押印がなくても相続手続はできますが、戸籍に名前があれば、相続手続においてその者の署名押印も必要となります。

 

 もし、戸籍に真実とは異なる血縁関係が記録されていても、真実は、各金融機関には判断できないので、単独で相続手続はできません。

 

 真実の相続人が相続手続を進めるには、まずは、誤った戸籍を訂正するところから始める必要があります。

 

2.戸籍の訂正の方法

 戸籍法には、いくつか戸籍を訂正する方法が列挙されています。不適法な記載等の訂正(戸籍法113条)、無効な行為の記載の訂正(戸籍法114条)、判決による戸籍の訂正(戸籍法116条)があります。

 

 戸籍法113条や戸籍法114条には争いはありますが、一般的に、戸籍の記載が不適法なことが明らかであり、関係者に争いがなく、また、相続人の範囲などの重要事項にかかわらないものを対象としたものと考えられています。

 

 したがって、相続人の範囲を争うようなケースにおいては、戸籍法116条による判決による訂正が必要です。判決による訂正とは、裁判によって親族関係を証明しなければならないということです。

 

3.相続人の範囲を争う訴訟・判決の類型

 戸籍の記載を変えるためには、以下のような親族関係に影響する裁判が必要です。

 

婚姻の取消しの訴え

婚姻の無効確認の訴え

離婚の訴え

協議上の離婚の取消しの訴え

協議上の離婚の無効確認の訴え

婚姻関係存否確認の訴え

嫡出否認の訴え

認知の訴え

認知取消の訴え

認知無効確認の訴え

父を定める訴え

親子関係不存在確認の訴え

養子縁組取消しの訴え

養子縁組無効確認の訴え

離縁の訴え

協議上の離縁取消の訴え

協議上の離縁無効確認の訴え

養親子関係不存在確認の訴え

 

4.親子関係不存在確認の訴えのポイント

 実親子関係がないことを確認する訴訟を、親子関係不存在確認請求といいます。

 

 訴訟選択は慎重にしなければなりません。ただし、婚姻成立の日から200日経過後であり、いわゆる推定される嫡出子である場合には、一定期間が過ぎていると親子関係を争うことができなくなってしまいます。子の生まれた時期、婚姻時期、離婚時期によっては、訴訟類型が変わってきますので、訴訟を提起する場合は慎重に行いましょう。

 

 また、仮に、親子関係不存在確認の調停の中で、DNAが合わないことが判明しても、出生から長期間が経過していると、子の親子関係の不存在を明らかにすることで著しい不利益がある場合には、権利の濫用として戸籍を変えられないこともあります。

 

5.認知の訴えのポイント

 婚姻していない男女間に子供が生まれた場合、父子間に生物学的な親子関係(DNAの一致等)があったとしても、父が子を認知しなければ法的な親子関係(相続権)が生じません。

 

 もし父親が生きていれば、生前に認知をしてもらえれば良いですが、認知をしないまま死亡し、他の実子や兄弟姉妹との間で相続紛争になることがあります。

 

 他の相続人は、戸籍上記載されていない子を無視して手続を進めようとすることがあります。また、そもそも戸籍に記載されていないので、気づかないまま手続が進むことがあります。

 

 この場合、認知を求める子は、認知の訴えを提起しなければなりません。このとき、訴える相手がたは、父は既に死亡しているので、父親の代わりに、検察官を被告として訴訟を提起します。検察官が被告となるのは、身分関係の確定という公益性の高い訴訟だからです。

 

 認知の訴えは、父が死亡した日から3年以内に行わないといけないという出訴期間が定められています(民法787条ただし書)。

 

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