相続開始の時から10年を経過した後の遺産分割について~令和3年改正 ~
1 遺産分割とは
被相続人が死亡し、相続が開始しますと、複数の相続人がいる場合には、被相続人の遺産は相続人の共有となります。この複数の相続人による共有関係を解消し、遺産を各相続人に分配するのが遺産分割という手続です。
そして、遺産分割は、民法が定めた相続分(これを法定相続分といいます。たとえば、相続人が妻と2人の子の場合には、法定相続分は妻が2分の1、子はそれぞれ4分の1です。)
あるいは被相続人が遺言で定めた相続分(これを指定相続分といいます。)に特別受益(相続人が被相続人から遺贈や生前贈与、死因贈与を受けた場合)及び寄与分(相続人が被相続人の財産の維持や増加に寄与した場合)を考慮して具体的相続分を定め、具体的相続分に基づき遺産の分割方法を定めます。
2 遺産分割がされないまま長期間が経過した場合の問題点
ところが、遺産分割をするのには時間的な制限がないため、相続開始後に遺産分割がされないまま長期間が経過しますと、相続が繰り返されることによって共有関係が複雑になり、遺産の管理や処分が困難となったり、所有者不明の土地が発生したりするという事態が生じています。
また、相続開始後に遺産分割がされないまま長期間が経過しますと、生前贈与や寄与分に関する資料が散逸してしまい、具体的相続分を算定するのが困難になって遺産分割をするのに支障が生じ、遺産分割をするのにも更に長期間を要することになってしまい、遺産の共有関係が長期間にわたって解消されないという事態が生じています。
3 令和3年の相続法(民法)の改正
そこで、令和3年の相続法の改正において、遺産分割を促進するために、遺産分割に一定の時間的制限を設ける改正がされました(改正後の民法904条の3)。
正確にいいますと、遺産分割自体に時間的な制限が設けられたのではありませんが、相続開始から10年経過後に遺産分割をする場合には、特別受益及び寄与分があるとの主張をすることができなくなり、法定相続分又は指定相続分に基づき遺産分割をすることになります。
このような時間的な制限が設けられたことにより、特別受益や寄与分を主張する相続人による早期の遺産分割請求を促すことが期待され、また、遺産分割の手続自体に掛かる時間の短縮が見込まれます。
ただし、相続開始後10年が経過した場合であっても、相続人の全員が具体的相続分による遺産分割をすることに同意した場合や、相続開始後10年が経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをしたなどの場合には、具体的相続分に基づき遺産分割をすることができます。
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