特別縁故者に対する相続財産分与申立制度について

身寄りのない方が亡くなった場合、その方と親密な関係にあった方は「相続財産分与申立制度」によって遺産を受け取れる可能性があります。

 

1 特別縁故者に対する相続財産分与申立制度とは

 

通常、亡くなった方(被相続人)の財産は配偶者・子ども・両親・兄弟姉妹などの法定相続人、あるいは遺言で受遺者に指定された方が相続します。被相続人に法定相続人がいなくて、遺言書も残されていない場合は、遺産の引取手がいないため、最終的には国のものになってしまいます(国庫帰属)。

 

しかし、それでは仮に「私が死んだら財産をお世話になった○○さんに渡してほしい」という被相続人の遺志を示している場合に、その遺志がが報われないことになります。

 

そこで、民法第958条の2により、被相続人と特別な関係にあった方に相続財産を分与することが認められています。そのために用意された制度が「特別縁故者に対する相続財産分与申立制度」というものです。

 

2 特別縁故者が相続財産の分与を受ける方法

 

特別縁故者が相続財産の分与を受けるためには、まず家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる必要があります。

 

相続財産清算人は、身寄りのない被相続人の財産を管理し、借金などの債務を支払い、受遺者がいれば遺産を引き渡します。それでも遺産が残った場合に、特別縁故者は相続財産分与の申立てができるようになります。

 

ここまでの手続きの流れは、以下のとおりです。

 

・家庭裁判所への申立て

・相続財産清算人の選任

・相続財産清算人を選任したことの公告

・相続債権者を捜索するための公告

・相続債権者が現れた場合は債務の支払い

・相続人を捜索するための公告

・相続人が現れた場合は遺産の引渡し

 

以上の手続きには約10ヶ月の期間がかかります。

 

特別縁故者は、相続人の不存在が確定してから3か月以内に、改めて家庭裁判所へ相続財産分与の申立てを行います。審判で相当と認められると、残った相続財産の全部又は一部を受け取ることができます。

 

3 特別縁故者の要件と証明方法

 

特別縁故者として相続財産を受け取るためには、以下の要件のどれかに該当する必要があります。また、家庭裁判所の審判では、特別縁故者に該当することを証明できる証拠を提出する必要があることにも注意しましょう。

 

(1)被相続人と生計を同じくしていた者

 

「生計を同じくしていた」とは、同じ財布で生計を立てていたということです。内縁の配偶者や、事実上の養子・養親、先に亡くなった子どもの配偶者などがこれに該当する可能性が高いといえます。

 

生計を同じくしていたことの証拠としては、同居していたことが分かる住民票や、同じ住所宛に発行された電気代や水道代の請求書、家計簿、日記などが挙げられます。

 

(2)被相続人の療養看護に努めた者

 

被相続人の生前に、介護や看護を献身的に行った人が該当します。先に亡くなった子どもの配偶者が該当するケースが多いです。親族でなくても日常的に被相続人の自宅を訪ねて介護や看護に努めていれば、該当する可能性があります。

 

ただし、看護師や介護士、ヘルパーなどで職業上、療養看護をしていた人は基本的に該当しません。

 

証拠としては、医療費や介護費の領収書、療養看護のために要した交通費の領収書、療養看護の様子を記録した日記などが挙げられます。

 

(3)その他被相続人と特別の縁故があった者

 

その他にも、上記2つのケースと匹敵するほど密接な関係にあった場合には、特別縁故者として認められる可能性があります。

 

特に親しくしていた友人・知人などで被相続人から「財産を譲りたい」と言われていた人や、同居はしていなくても日常的に家事をするなどして生活の面倒を見ていた人、精神的な支柱と言える存在であった人などが該当する可能性が高いといえます。

 

証拠としては、被相続人と密接な関係にあったことが分かる手紙やメール、写真、日記、被相続人が財産を譲ろうと考えていたことが分かるメモや日記、方式不備の遺言書などが挙げられます。

 

4 特別縁故者に関する裁判例

 

特別縁故者として認められた裁判例は数多くありますが、単に被相続人と親しかったというだけで特別縁故者として認められるわけではありません。

 

例えば、内縁の妻が特別縁故者として認められた事例(東京家審昭和38年10月7日)では、長年に渡って一緒に暮らしていたことが重視されました。

 

被相続人の療養看護に努めた者として認められた事例では、被相続人を自宅に引き取り、一切の世話をしていたというものがあります(大阪家審昭和52年3月15日)。

 

これらの裁判例を見ると、特別縁故者として認められるためには、被相続人の家族と同等の生活状況や精神的なつながりが必要であるといえます。

 

まとめますと、特別縁故者として相続財産を受け取るためには厳しい要件を満たす必要がありますし、家庭裁判所での手続きも大変です。親しい方に身寄りがなく、財産を譲りたいという意向をお持ちのようであれば、できる限り生前に遺言書を作成してもらった方がよいでしょう。

 

当事務所には、遺言書の作成代行や特別縁故者の相続財産分与の申立てを始めとして、相続に関する実績が豊富にございます。相続に関するご相談は、相談料は2回目まで無料ですので、お気軽にご相談ください。

 

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