「広大地評価」と「地積規模の大きな宅地の評価」とは?

一般的な宅地よりも著しく広い宅地を相続した場合には、相続税を計算する際の土地評価額が大幅に減額される制度を利用できる可能性があります。

 

相続税の払い過ぎを防ぐために、制度の利用条件や、制度を利用した場合の土地の評価方法を知っておきましょう。

 

1 宅地評価とは何か?

 

相続税を計算するためには、まず相続財産の総額を算出しなければなりません。しかし、相続財産は現金や預貯金のように、金額が明確に分かるものばかりではありません。

 

不動産や動産などについては、所定の方式により「評価」を行い、相続発生時の時価を割り出す必要があります。相続した宅地の時価を割り出すために必要となるのが「宅地評価」です。

 

相続税申告の場合、宅地の評価は路線価方式又は倍率方式で行われますが、一般的に田・畑・山林など他の地目よりは評価額が高くなります。

 

ただ、著しく広い宅地は一般的な分譲地と異なり、そのままの状態で全体を使用することが難しいため、適度な広さに区切って宅地としての開発を行ったり、中に通路を作って一部のみを使用したりする必要があります。

 

また、戸建て住宅の分譲地として開発するためには、都市計画法上、道路や公園などの公共施設を設けなければなりません。ただ、そうなると宅地として利用できる部分が少なくなってしまいます。

そのため、著しく広い土地については評価額を軽減することが認められているのです。

 

以前は、「広大地評価」という制度があり、相続した宅地の評価額が最大65%軽減されていました。

 

しかし、この制度は適用要件が曖昧であり、土地の形状を考慮した補正が行われないという問題があったことから、適切に利用されないケースが散見されました。

 

そこで、平成29年度の税制改正により広大地評価の制度は廃止され、平成30年1月1日からは「地積規模の大きな宅地の評価」という制度が新たに導入されています。

 

2 地積規模の大きな宅地とは?

 

「地積規模の大きな宅地の評価」とは、文字どおり、地積規模の大きな宅地の評価額を一定の条件のもとに軽減する制度のことです。

 

「地積規模の大きな宅地」とは、三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)のうち国土交通省が指定する地域では500㎡以上、その他の地域では1,000㎡以上の宅地であり、次の4つのどれにも該当しないもののことです。

 

・市街化調整区域(開発行為が認められている区域は除く)にある宅地

・都市計画法上、工業専用地域に指定されている地域にある宅地

・指定容積率が400%(東京23区は300%)以上の地域にある宅地

・5万㎡以上の大規模工場用地(財産評価基本通達22-2に定めるもの)

 

なお、路線価が設定されている地域では、普通商業・併用住宅地区又は普通住宅地区にある宅地に限り、「地積規模の大きな宅地の評価」を利用できることに注意が必要です。

 

3 地積規模の大きな宅地を評価する方法

 

「地積規模の大きな宅地の評価」を利用する場合、宅地の評価額は次の計算式で算出します。

 

路線価×各種補正率×規模格差補正率×土地面積=評価額

 

路線価が設定されていない地域では、倍率方式による1㎡あたりの価額で計算します。

 

各種補正率には、土地の形状などによる補正を行うための「奥行価格補正率」と「不整形地補正率」、接道状況による補正を行うための「側方路線影響加算率」と「二方路線影響加算率」があります。

 

規模格差補正率とは、広い土地を戸建住宅用分譲地として開発する際に、公共施設の設置により宅地としての全体的な価値が減少する割合のことです。

 

一例として、三大都市圏の普通住宅地にある1,000㎡の宅地を相続したとしましょう。このケースでは規模格差補正率は0.79となるため、路線価が10万円、各種補正率が1.00であるとすると、評価額は10万円×1.00×0.79×1,000㎡で7,900万円となります。

 

「地積規模の大きな宅地の評価」を利用しなければ、評価額は10万円×1,000㎡で1億円です。この制度の利用により、評価額を2,100万円下げることができます。

 

4 「地積規模の大きな宅地の評価」を利用するときの注意点

 

「地積規模の大きな宅地の評価」の制度は、登記簿上の筆単位ではなく、利用上の単位である区画ごとに適用されることに注意が必要です。

 

そのため、登記簿上は2筆に分かれていても一体的に利用されている場合には、全体の面積が要件を満たしていれば、この制度を利用できます。

 

逆に、全体の面積が要件を満たしていても、一部を貸付地としていて、自ら使用している区画の面積が要件を満たさない場合には、この制度を利用できないことに注意しましょう。

 

「地積規模の大きな宅地の評価」が導入されたことにより、「広大地評価」よりも制度の利用条件は明確になりましたが、それでも実際に土地を評価するのは簡単ではありません。相続税を払い過ぎないためには、相続税の申告に慣れた税理士などの専門家に相談した方がよいでしょう。

 

また、相続財産の評価額は各相続人の利益に影響することから、遺産分割で評価方法や評価額をめぐって相続人同士でもめることもあります。そんなときは、弁護士に遺産分割協議や調停を依頼するのが有効です。

 

当事務所には、遺産分割や土地の評価をはじめとして、相続に関する実績が豊富にございます。また、提携している税理士もいます。相続のご相談は、相談料は2回目まで無料ですので、お気軽にご相談ください。

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