所有者不明土地の解消に向けて(その1)~令和3年民法改正~

1 所有者不明土地が発生する原因

全国の所有者不明者の土地の割合は、平成29年度の総務省の調査によると22%あるとのことです。その内訳は、相続登記の未了が約66%であり、住所変更登記の未了が約34%ということです。

所有者不明のせいで、昨今のいわゆる空き家問題など、さまざまなトラブルの原因となっていました。

そこで、民法・不動産登記法の改正により、「個々の土地・建物の管理に特化した財産管理制度」が新設されました。土地・建物に特化した財産管理制度とは、所有者が不明である土地・建物や、管理不全である土地・建物について、管理人を選任してもらうことができる制度です。管理人には、事案に応じて、弁護士や司法書士など相応しい者が選任されます。

この制度は、令和5年(2023年)4月1日から施行される予定です。

2 2つの財産管理制度について

土地・建物に特化した財産管理制度には、⑴所有者不明土地・建物の管理制度と⑵管理不全状態にある土地・建物の管理制度という2つの制度が設けられています。以下に概要をご説明します。

⑴ 所有者不明土地・建物の管理制度

これは、所有者がわからない土地・建物や、所有者は分かっても所有者の所在を知ることができない土地・建物について、その土地・建物の管理人を選任してもらう制度です。

所有者不明土地とは、登記上に所有者の氏名は載っているもののその所有者と連絡がつかない土地や、所有者の生存さえ不明である土地、その相続人とも連絡がつかない(相続人が誰なのかもわからない)土地などを指します。

〔要件〕

① 全部事項証明書(登記簿)、住民票など、調査を尽くしても所有者又はその所在を知ることができないこと

② 管理状況等に照らし管理人による管理の必要性があること

という要件を全て充たしている必要があります。

ただし、管理者選任の申立てをすることができるのは、所有者不明土地・建物の管理について利害関係を有する利害関係人に限定されています。利害関係人の例としては、不動産の利用や取得を希望する者や、共有地における不明共有者以外の共有者が挙げられます。

〔効果〕

管理人は土地・建物の保存や利用、改良行為などを行うことができるほか、裁判所の許可を得て、売却や建物の取壊しなどをすることも可能です。ただし、当然ながら売却などで得た金銭は管理人のものとなるわけではなく、供託をしてその旨を公告することとされています。

⑵ 管理不全状態にある土地・建物の管理制度

もう一つの方は、所有者による管理が不適当であることによって他人の権利や法的利益が侵害されていたり、侵害されるおそれがあったりする土地・建物について、その土地・建物の管理人を選任してもらう制度です。

例としては、ごみが不法投棄された土地を所有者が放置しており、悪臭や害虫発生による健康被害を生じている場合が挙げられます。

〔要件〕

①所有者による土地・建物の管理が不適当であること

②他人の権利・法的利益が侵害され、又はそのおそれがあること

③土地・建物の管理状況等に照らし、管理人による管理の必要性が認められること

という要件を全て充たしている必要があります。

ただし、管理者選任の申立てをすることができる人(申請権者)は、倒壊のおそれが生じている隣地所有者や、被害を受けている者などの利害関係人に限定されています。

〔効果〕

管理人は、その土地・建物の保存や利用や改良行為のほか、裁判所の許可を得ることにより、これを超える行為をすることも可能であるとされています。しかし、こちらは所有者自体が不明ということではありませんので、売却や建物の取壊しなどを自由に行えるわけではなく、所有者の同意を得る必要があります。

3 まとめ

個々の所有者不明土地・建物の管理制度が創設されたことで、今後は土地・建物単位で管理人が選任され、売却や管理が可能になる点が大きなメリットであると考えられます。

専門的な判断が必要とお感じの方は、ぜひ弁護士までお問い合わせください。

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