遺産分割の調停・審判はどう違う?

遺産分割の調停・審判どう違う?

 

遺産分割の協議がどうしても上手く行かない場合、第三者である裁判所を加えた解決方法として、調停や審判といったものがあります。

ただ、ほとんどの方にとって聞き慣れない言葉で、どんなものかイメージがわかないかと思います。

この記事では、

 

・遺産分割調停とは

・審判手続きとは

・調停と審判の違いとは

・弊事務所で取り扱った事例

 

について解説します。

 

遺産分割調停とは

遺産分割調停を簡単に説明すると「家庭裁判所を間に挟んで行う遺産分割の話し合い」です。

当事者である相続人同士での話し合いで解決できなかった場合に活用できる制度です。

中立的な立場である裁判所が間に入り、法的な見解を踏まえて話し合いをすすめるので、スムーズな解決が期待できます。

 

この調停は、個人で申立てを行うことも可能ですが、手続きは複雑です。

また、有利に話し合いを進めていくためには、法的な知識が不可欠です。

調停委員にこちらの主張を理解してもらうため、できるだけ多くの証拠を集め、論理的に説明できるようにしなくてはなりません。

遺産分割調停の大まかな流れ

遺産分割調停は、大まかには以下のような流れで行います。

 

1:分割する遺産にはどんなものがあるか、相続人は誰かを確定する

2:管轄の家庭裁判所に、遺産分割調停の申立てを行う

3:調停期日に出席、調停委員を介して話し合いを行う

 

まず調停の申立てをする前に、分割する遺産の内容や相続人を確定しなくてはなりません。

すでに遺産分割協議をしているのであれば、詳細な遺産内容や、相続人の確定も終了しているかもしれません。

もし、それもまだできていないようであれば、弁護士がお手伝いすることが可能です。弊事務所では、遺産調査や相続人調査のご依頼を承っております。

 

遺産と相続人が確定されたら、家庭裁判所に必要書類を提出し、申立てを行います。

 

申立書が正式に受理され、その旨が他の相続人に送達されると、裁判所から期日(調停を行う日)の指定がされます。

期日には、裁判所に行って調停委員に主張を伝えていかなくてはなりません。

その際、申立人は他の相続人とで控室がわかれています。順番に調停室に入って話をするので、当事者同士が顔を合わせることはありません。(ただし初回と最終回のみ、全員に手続内容の説明を行うため顔を合わせることとなります。)

 

通常であれば、何回かの期日を繰り返して話し合いがまとまるかどうか調整していくこととなります。

終了までには、約3ヶ月~1年以上かかります。

調停でも話がまとまらなかった場合は、審判手続へと以降します。

 

遺産分割調停を弁護士に依頼するメリット

遺産分割調停は、申立て自体は個人の方でも可能です。

 

申立書は、裁判所が用意している雛形を使えば、知識の無い方でもある程度簡単に用意ができます。費用も、相続人1人あたり1,200円+税の収入印紙と書類を送るための郵便切手代だけなので、そんなに高くつきません。

 

しかし、それでも弁護士費用を払ってまで、調停を弁護士に依頼する方が多いのです。

というのも、調停に弁護士が参加することで、有利に話し合いをすすめることができるからです。

 

調停委員に自分の主張を伝えるときには、法律に基づいた主張を行う必要があります。また、調停委員からの提案にどこまで譲歩できるか検討する際にも、法律の知識が不可欠です。

もちろんご自身で調べて期日に臨むことも可能ですが、短時間で準備できる範囲には限りがあります。

交渉に慣れており、法律の知識が豊富な弁護士に依頼することで、有利に調停を進められるのです。

 

また、遺産分割調停申立ての準備を全て弁護士に丸投げすることもできます。申立書の作成だけでなく、添付書類の用意など面倒な準備も、弁護士に任せられるようになります。

遺産分割審判とは

遺産分割審判とは、調停でも話がまとまらなかった場合に行われる手続きです。

調停では相続人それぞれが自分の主張をしながらも妥協点を探し、合意を目指します。しかし、調停では話がまとまらなかった場合には、審判によって裁判所が遺産分割の方法を決定します。

話し合いや主張のすり合わせではありません。裁判所が妥当だと判断した遺産分割の方法を指定するので、当事者がその内容に了承するかどうかは関係ないのです。

 

遺産分割審判の大まかな流れ

遺産分割審判は、遺産分割調停が不成立となったときに行われる手続きです。調停が不成立となった場合、自動的に審判に移行するため、「審判のための申立て」というのは必要ありません。

以下に審判の大まかな流れを説明します。

 

1:裁判所より審判期日の指定

2:審判期日(1ヶ月に1回程度)

3:審判(書面にて)

4:審判の確定、相続手続き

 

審判手続きに移行すると、裁判所が審判期日の指定をします。

審判期日には、当事者である相続人が集まって、主張内容を記した書面や証拠を提出したり、意見や説明をしたりします。

 

審判手続が進み、十分な証拠や主張が集まれば、審判官が審判を下します。裁判所に行く必要はなく、書面によって内容が通知されます。最後の審判期日から大体1、2ヶ月で書類が届きます。

審判内容に対して相続人がだれも異議を唱えなかった場合は、その審判が確定します。

確定後は、その内容に従って相続手続きを進めていかなくてはなりません。

 

調停と審判はどう違う?

調停と審判、どちらも当事者だけでの話し合いではまとまらなかった相続を、裁判所の力を借りてまとめる手段となります。

しかし、この2つの方法には決定的な違いがあります。具体的には、

 

・当事者の合意なしに決定するかどうか

・調停委員が関わるかどうか

・相続人同士が一箇所にあつまるかどうか

 

といった違いがあります。それぞれ詳しく解説します。

 

当事者の合意なしに決定するかどうか

調停では、相続人同士が話し合って全員が納得できる分割方法を決めていきます。あくまで話し合いなので、誰か一人でも納得できなければ成立できません。

 

しかし、審判の場合は法律に照らして、最も妥当だと考えられる遺産分割の方法を指定します。当事者が納得しているかは関係ありません。

 

調停委員が関わるかどうか

調停では、調停委員が間に入って当事者達の主張を聞きます。

一方で、審判では裁判官が立ち会います。話し合いの雰囲気は薄くなり、より厳格な雰囲気になります。

 

相続人同士が同じ場所に集まるかどうか

調停では、申立人や相手方は別の控室で待機します。順番に調停委員のいる部屋に呼び出されるため、相続人同士が調停の場で同じ空間に集まることはないのです。(ただし、最初と最後だけは手続き説明のために、全員が同じ部屋に集められます。)

 

審判では、裁判官がいる部屋に相続人全員が集まり、手続きを進めます。話し合いをするわけではないので、会話数は少なくなるでしょうが、顔を合わせる必要はあります。

 

審判においては、特に弁護士をつけておく必要性が高くなります。調停が、話し合いであり全員で合意点を探し出すものであるのに対して、審判は法律に基づいた判断であるためです。

調停以上に、法律に関する知識が必要となるのです。

 

弊事務所で取り扱った事例

弊事務所で取り扱った、調停や審判となった事例を紹介します。

 

遺産分割調停事件→生前贈与の有無が問題となった事例

事情

相続人が、子2人と孫3人の合計5人存在し、遺産としては預貯金や不動産がありました。

当事者同士で事前に協議をしたが、生前贈与の有無と金額について折り合いがつかず、依頼者が他の4人の相続人から遺産分割調停を提起されたため、弊事務所に依頼されたというものです。

 

争点は、

1:遺産である不動産の評価額

2:①故人に生前自宅を建ててもらった相続人 

  ②他の親族に対する借入金を故人に立替払いしてもらった相続人(依頼者)

  ③生命保険の保険料を故人に支払ってもらっていた相続人

  がいたという事実から、依頼者に有利な説明ができないか

 

という2点でした。

 

2に関して、これらの故人の行為が生前贈与であるとされた場合は、それだけ遺産を前払いしてもらっていることになり、生前贈与を受けた相続人の遺産取り分は減ってしまいます。

依頼者としては、自分が受けた生前贈与(②)はしっかりと認めつつ、他の相続人に対する生前贈与を指摘し、その分の額は遺産取り分より差し引くべきだと考えていらっしゃいました。

 

経過と結論

1については、当事者がそれぞれ取ってきた不動産業者の査定金額の中間値を取ることにしました。依頼者は不動産自体は相続しなかったため、不動産価値がある程度高くなることで、取得金額が増えることとなりました。

 

2については

 ②:被相続人が取得した、依頼者への立替金返還請求権に形を変えたものと考えられ、そのうち3分の1については、依頼者の取得額から控除されないようにすることができました。

 ①:客観的資料からは、他の相続人への生前贈与としては認められ難かったものの、不動産の実態について詳しく主張したこともあり、相当程度を遺産として評価してもらえました。

 ③:実質的な保険料負担者を客観的資料によって示すことができたため、他の相続人への生前贈与と扱うことに成功しました。

 

解決事例 NO.56 より

遺産分割審判申立事件

事情

依頼者:女性(81歳)

夫が亡くなり相続が発生しましたが、夫との間に子がおらず、ご本人と夫の兄弟感での相続となりました。

しかし、兄弟の数が多いだけでなく、高齢であったため既に亡くなっている方も多く、その子らまで相続人が多岐にわたっていました。

相続人が非常に多数であったことに加え、その中には住所が不明の方、統合失調症のため意思疎通が困難な方もいたため、協議により相続手続きをすすめることが困難でした。そこで司法書士からアドバイスを受け、手続きを依頼すべく来所されました。

 

経過と結論

統合失調症の者について、家庭裁判所に後見人選任の申立を行い、後見人の選任を受けました。そのうえで、家庭裁判所に遺産分割審判の申立を行い、審判により遺産の分割を進めました。相続人の多くの方からは相続分の譲渡を受けることができ、遺産の大部分を相続することができました。

 

今回の解決事例のポイント

相続人が非常に多数であり、相続分の計算が非常に複雑な事案でした。依頼者は代償を支払って不動産を取得することを希望されたので、できる限り不動産の価値を少なく見積もり、その評価の妥当性を裁判所に主張することで、取得の代償を可能な限り小さくしました。

 

解決事例 NO.61 より

 

相続のお悩みは弁護士にご相談を

先程も説明しましたとおり、遺産分割調停や審判は、ご自身でお手続き頂くことも可能です。

しかし、より自分に有利になるよう立ち回るためには、豊富な法律知識や、裁判所で適切に主張したり交渉したりするスキルが必要となります。

相続のプロである弁護士がサポートした方が、希望通りの遺産分割をすすめることができるのです。

 

弊事務所には、相続問題の経験豊富な弁護士が在籍しております。

遺産分割調停や、遺産分割審判の解決事例も多数ございます。困ったことがあれば、ぜひご相談頂ければと思います。

 

もちろん、まだ相続紛争が起こっていないが、トラブルに発展しそうで心配だと言う方のご相談も受け付けております。

弊事務所では初回相談料は無料でお受けしておりますので、お気軽にご連絡ください。

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