NO.56 男性(56歳)・相談内容:遺産分割調停事件 ⇒ 生前贈与の存否が問題となった事案 

男性(56歳)

相談内容:遺産分割調停事件

・事情

 相続人が、子2人と孫3人の合計5人存在し、遺産としては預貯金や不動産が存在しました。当事者間で事前に協議はなされたようですが、生前贈与の存否と金額について折り合いがつかず、依頼者が、他の4人の相続人から遺産分割調停を提起され、これに対応するためにご依頼いただきました。 争点としては、①遺産たる不動産の評価額、②(ⅰ)被相続人に生前に自宅を建ててもらった相続人、(ⅱ)他の親族に対する借入金を被相続人に立替払いしてもらった相続人、そして、(ⅲ)生命保険の保険料を被相続人に支払ってもらっていた相続人がいたところ、これらを依頼者の意思と依頼者の利益方向に法的に構成することができないかということにありました。依頼者としては、(ⅱ)については、自らに対する生前贈与ではないと思っておられ、他方で、(ⅰ)と(ⅲ)はそれぞれ相続人に対する生前贈与であると考えておられました。なお、生前贈与に当たるということは、それだけ遺産を前払いしてもらっていることになり、生前贈与を受けている相続人が最終的に取得することができる遺産の金額が下がってしまうことになります。したがって、依頼者は、自らに対する生前贈与については、そうであるものはしっかり認めつつ、評価の分かれうるものを消極にとらえ、他方で、他の相続人に対する生前贈与はそのとおりそれぞれの相続人の取得金額から差し引かれるべきであると考えておられ、それを法的にどのように主張していったらいいか不安な思いを抱いておられたことと思います。

・経過と結論

 上記①は、対立当事者が互いに不動産業者から取った査定金額の中間値を取るということになり、不動産それ自体を相続しない依頼者にとっては、不動産の価値が相当程度高くなることで、遺産総額、ひいては取得する金額が増えることになりました。(ⅱ)は被相続人が取得した、依頼者への立替金返還請求権に形を変えたものと考えられ、そのうち3分の1については、依頼者の取得額から控除されないことにすることができました。(ⅰ)は客観的資料が乏しかったこともあり、他の相続人への生前贈与とまでは評価しづらかったものの、相当程度の評価額を遺産に組み込むことができました。(ⅲ)は、実質的保険料負担者を客観的資料によって示すことができたため、他の相続人への生前贈与と扱うことに成功しました。

・今回の解決事例のポイント

 上記①については、複数の不動産業者に査定をお願いすることで、不当に低い評価額とされないように留意しました。(ⅱ)については、一見すると、立替払い後に返還の要求を被相続人から受けなかったことをもって生前贈与と捉えられそうに見えましたが、被相続人が法的に返還を請求することができる権利と捉えたことで、一定の割合で、依頼者の相続財産の減少を防ぎました。(ⅰ)については、客観的資料からは、他の相続人への生前贈与とはどうしても認められがたかったものの、不動産の実態について詳しく主張したこともあり、相当程度を遺産と評価してもらいました。 遺産分割調停では、最終的には金額として誰がいくらを受け取るのかということが重要になりますが、遺産の名目にはこだわりすぎず、裁判所がやむを得ず下す審判というものの結果をにらんだうえで、審判に移行するよりも、依頼者がより多くの金銭を受け取ることができるように、調停委員や調停官との密なやり取りを経て、話し合いに臨んだことが、依頼者の満足と円満解決に資したと考えています。 遺産分割は思いと法的問題点が混在する複雑な事案になりうるものですので、お困りになられたり、専門家に相談に乗って欲しいと思われた方は、ぜひ一度事務所までお越しいただければと思います。

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