遺産分割協議で親族ともめないためのポイントとは?
近年、「争続」という言葉が定着するほど相続におけるトラブルの件数が増加傾向にあります。
裁判所ホームページの司法統計年報によると、平成21年には10,741件だった遺産分割事件数は、平成30年には13,040件にまで増えています。
つまりここ10年で、遺産分割事件の数は21.4%も増加しているのです。
しかも、トラブルが発生しているのは一部の資産家の間だけではありません。莫大な資産があるわけでもない、いわゆる「普通の家」でも大きな紛争事件に発展しているのです。
以上のことを踏まえ、本記事では、遺産相続で親族ともめないためのポイントについて説明します。
「うちは遺産も少ないから相続トラブルは関係ない」は大きな間違い?
「大きな額の預貯金や資産となるものもないから、我が家は相続争いとは無縁だろう」と思って、何も対策していない方も多いのではないでしょうか。
しかし、実は遺産が少ない方こそ相続トラブルが起こりやすいのです。
裁判所のホームページ掲載の平成30年度司法統計年報によると、平成30年に起こった遺産分割事件7,507件のうち、遺産総額が1,000万円以下だった事件数は2,476件でした。
割合でいうと、3割以上にあたります。
さらに、遺産総額5,000万円以下の事件が、遺産分割事件の75%以上を占める(うち1,000万円以下の事件が30%前後)のです。
なぜこのような結果になるのかというと、遺産の少ない家では「油断しがち」になりやすいことが関係しています。
遺産総額が大きな金額になる場合は、生前のうちから相続対策をしている場合が多いです。生前から入念に準備をされており、遺産の行方があらかじめ決まっているため、亡くなった後のトラブルが起こりにくいのです。
しかし、遺産額が少ない家では、ほとんど対策をしないままに亡くなるケースが多いです。そのため、残された遺族は遺産をどう分けたら良いかわからなくなり、トラブルに発展してしまうのです。
弊事務所では、亡くなった後のトラブル防止としての遺言書作成プランや、相続手続きお任せプランなどのサービスをご用意しております。
転ばぬ先の杖として、弁護士をご活用いただく方法があることを知って頂ければと思います。
遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産をどう分割するかを話し合うことを指します。
遺産分割協議自体には、「いつまでにしなくてはならない」という期限はありません。
しかし、たとえば銀行預金を10年以上放置すると休眠口座に移行してしまうことや、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税を申告しなくてはならないことなどを考えると、早めに取り組んだ方が良いと言えます。
また、遺産分割協議は相続人全員が納得しなくてはなりません。誰かひとりでも参加していなかったり、内容に納得しなかったりした場合は成立しないのです。
過去には、相続人達も把握できていなかった新たな相続人が発覚し、一度まとまった遺産分割協議が無効となってしまったケースもあります。
もちろん、当事者同士の話し合いでは全く遺産分割方法が決まらないという事例もあります。その場合は、家庭裁判所が行う遺産分割調停などを利用して、それぞれの主張のすり合わせをしていきます。
調停でも話し合いが上手く行かない場合は、遺産分割審判に移行します。審判では、裁判官が法的に妥当な遺産分割案を提示します。
この審判には強制力があり、決定した場合は納得できなくても従わなくてはなりません。
遺産分割調停や、遺産分割審判に関しては、「遺産分割の調停・審判はどう違う?」の記事を参考にしてみてください。
遺産分割協議の流れ
では、遺産分割協議はどのような流れで進んでいくのでしょうか。以下におおまかな流れと、それぞれの手続について説明します。
1 相続人の範囲を確定
2 遺言書の有無や有効性を確認
3 遺産の範囲を確定
4 遺産の評価
5 遺産総額を確定
6 遺産の分割方法を確定
7 遺産分割協議書の作成と押印
まず、相続人の範囲を確定させなくてはなりません。場合によっては、「故人と前妻との間に子供がいる」「故人が養子縁組をしている」などで、遺族も知らない相続人がいる場合もあります。
次に、遺言書の有無や有効性を確認します。故人が遺言書を残しているのかどうか、またその遺言書が有効なものかどうかも確認しなくてはなりません。
遺言書がある場合には、基本的にその内容に沿って遺産を分割します。しかし、場合によっては形式が整っておらず、正式な遺言書と認められない場合もあるので注意が必要です。
そして、遺産の範囲を確定します。
遺産とは、プラスのものだけではありません。負債などのマイナスな財産もあります。故人が残したものにどのようなものがあって、どれがプラスでどれがマイナスかを確認しなくてはなりません。
続いて遺産の評価を行います。
遺産は価値が明確なもの(預貯金など)だけではありません。不動産や美術品などいくらの価値があるかわからないものも多くあります。
そういったものの価値を確定し、遺産分割に備えなくてはなりません。
遺産の評価が終わると、遺産総額が確定します。その遺産総額を元に、相続人に遺産を分配を行います。
遺産総額が確定したら、分割方法を決めて行きます。法定相続分通りに分配するのか、故人が生前贈与した分をどう考慮するのかなどを話し合います。
特にトラブルが起こりやすい段階でもあります。弊事務所にも遺産分割の方法や取り分で揉めて相談に来られる方がとても多いです。
遺産分割の方法が確定したら、遺産分割協議書を作成します。この協議書には、相続人全員の押印が必要です。
一人でも参加していなかったり、押印がない場合は無効となります。
遺産分割協議を有利にすすめるためのポイント
遺産分割協議を有利にすすめるためには、いくつかのポイントがあります。
今回は特に注意しておきたい3つのポイントを解説します。
遺言書の確認をする
遺産分割をする上でまず確認しなくてはならないのが、遺言書です。
有効な遺言書が残されていた場合、相続人は遺産分割協議の際にその内容を検討し、遺言通りに遺産分割をするかどうか決めます。
大体の被相続人は、相続人の誰かに遺言書の保存場所を伝えていますが、なかには作成したものの誰かに伝える前に亡くなってしまうケースもあります。遺品整理の際には注意深く探してみましょう。
ただし、遺言書が見つかったからと言って、それが全てではない点も知っておかなくてはなりません。
例えば、法定相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限受け取れる遺産の取り分というものがあります。遺留分は遺言書よりも強い効力を持っています。
遺言書で指定された自分の相続分が、遺留分よりも少ない場合は足りない分を請求することができます。
誰が相続人か確定する
相続人の範囲の確定もとても重要です。先程もご説明しましたが、遺産分割協議においては全員の参加・押印が必要です。
一人でも欠けていれば、どれだけ話し合いが進んでいても全て無効となります。
せっかく決めた遺産分割が無効とならないよう、相続人の確定は早めに行っておきたいものです。
しかし、場合によっては相続人の確定はとても複雑で難しいものとなります。故人の生前から死亡までの全ての戸籍を取得し、相続人の存在を確認する必要があります。
相続人調査はできるだけ短い時間で行うこともポイントです。
離婚歴があったり、本籍地を転々と移動させていたりすると、戸籍謄本を集めるだけでも大変です。どうしても作業に時間がかかってしまいますが、相続人の確定がされないと遺産分割自体が始まらないのです。
個人で相続人調査をするのが難しいのであれば、弁護士など専門家にまかせてしまうのがおすすめです。
弊事務所では、相続人調査も行っています。相続人に変わって、弁護士が戸籍謄本を集め、内容を検討して相続人の確定を行います。
遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議において、分割方法が決まったら「遺産分割協議書」を作成しましょう。
実は、遺産分割協議書は作成必須ではありません。しかし、個人名義の銀行口座の名義変更や解約、不動産の名義変更などの手続きに必要となります。
また、遺産分割協議書を作成しておけば、後から言った言わないの水掛け論になるのを防げます。
全員で納得したと証明するためにも、全員の署名捺印された遺産分割協議書を作成するのがおすすめです。
親族ともめないための遺産分割協議アドバイスプラン
まだトラブルは発生していないけれど、法的に有効な遺産分割協議書を作りたいとお考えであれば、遺産分割協議アドバイスプランというものもあります。
これは弁護士が誰か特定の相続人につくのではなく、相続人全員のご相談をお受けするプランです。
相続人全員から、最初に同意を頂いて活動し、平等かつご事情に即したアドバイスを致します。
具体的には、
1 遺産の調査
2 最初の遺産分割協議から立ち会う
3 相続人全員に対して、法律や判例でどのようになっているかをご説明する
4 相続人全員でお決めになったことを、遺産分割協議書にする
5 最終的な財産の分配や分割(ときには不動産の名義変更登記)を行う
などの手続きを弁護士が一括で行います。
遺産分割をトータル的にサポートするプランとなっていますので、
「相続のことで、相続人の間でもめたくない」
「相続人全員が突然のことで戸惑っている」と考えている方々におすすめのプランです。
料金は以下をご参考にしてください。
料金(税別)
3,000万円以下の部分:2.4%
3,000万円~3億円以下の部分:1.2%
3億円~10億円以下の部分:0.6%
10億円超の部分:0.3%
遺産相続における弁護士と言いますと、トラブルが泥沼化したときに相談する最終兵器とお考えの方が多いように思います。
しかし、実はトラブルが発生するまえに予防策として活用いただくことも可能なのです。
相続でお困りの方は、ぜひ弊事務所までご相談ください。
弊事務所では相続に関する初回相談料は無料です。連絡先は下記バナーにございますので、お気軽にご連絡ください。