公正証書遺言を薦める理由

 

第1 相続法改正に伴う自筆証書遺言の利用の促進

 1 自筆証書遺言の方式緩和

 2 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設

第2 相続法改正で公正証書遺言のメリットはなくなったのか?

 1 公正証書遺言を薦める理由

 2 自筆証書遺言が適している場合

第3 まとめ

 

 

 

第1 相続法改正に伴う自筆証書遺言の利用の促進

改正前相続法においては、公正証書遺言は自筆証書遺言に比べ改ざんや破棄の危険がなく、また、口述による労力の軽減という明確なメリットがありました。その結果、現状、わが国における遺言書の利用状況としては、公正証書遺言がそのほとんどを占め、自筆証書遺言の利用は1割程度に留まることとなっております。

 

しかし、相続法改正による以下の様な遺言制度の改正に伴い、自筆証書遺言の利用が促進される方向に向かうと予想されます。

 

1 自筆証書遺言の方式緩和

自筆証書遺言の作成には、原則として遺言者が「全文」を自書しなければなりません(改正民法968条1項)。そして、不動産の所在地や、預貯金口座の口座番号等、全てを自書しなければならないとされていたため、遺言者にとって大きな労力となっていました。

 

しかし、相続法改正により、不動産や預貯金口座等の「目録」については、自書によらずとも目録の全頁に署名押印することで足りることとされました(改正民法968条2項)。これにより、不動産については登記事項証明書を、預貯金口座については通帳のコピーを別紙として添付した上で、全頁に署名・押印をすることで遺言を作成することが可能となり、作成者の労力が軽減されることとなりました。

 

2 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設

相続法改正による遺言制度の改正に伴い、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が令和2年7月10日(金)に施行され、「法務局における自筆証書遺言の保管制度」が創設されることとなりました。

 

遺言者自身が法務局に自筆証書遺言の原本を持参し、手数料(政令で定められます)を支払った上で、保管申請が認められることとなります。保管申請が認められると、原本とともに自筆証書遺言の内容が画像化して保存されます。そして、相続が開始した後に、相続人や受遺者等は、遺言書の閲覧等を請求することができることとなります。

 

法務局により遺言書の保管がなされることから、自筆証書遺言の改ざんや破棄に関する紛争は相当程度減少すると考えられます。さらに、この制度を用いた場合、自筆証書遺言に通常必要とされる検認手続が省略可能となるため、自筆証書遺言のデメリットの多くが解消されることとなります。

 

 

第2 相続法改正で公正証書遺言のメリットはなくなったのか?

上述のように、自筆証書遺言の方式が緩和され、かつ保管制度が創設されることにより、自筆証書遺言のデメリットが相当程度解消されます。しかし、そうだからといって公正証書遺言が不要になるわけではありません。

 

1 公正証書遺言の利用を薦める理由

自筆証書遺言では、法務局は遺言書保管法の要件を充足しているかどうかという点で遺言の中身を確認するのみで、遺言書の内容については確認してもらえません。そのため、遺言書を作成する際には、遺留分侵害の有無や遺言執行者の指定等、後の相続争いを生み出さないように、慎重に検討しなければなりません。

 

そうなると、遺言書を作成する場合には、専門家に相談することで遺言書の内容を慎重に検討した上で、公証人が遺言書の法的有効性を確認してくれる公正証書遺言を利用することが、相続争いを防止する観点では最善であると考えられます。

 

2 自筆証書遺言の方が適している場合

もっとも、公正証書遺言は、書き換えの必要が生じた場合、その都度、相続人の数ごとに、安くない手数料が必要となります。そのため、相続財産の価額の変動の可能性が大きい場合など、遺言を定期的に書き換えたい場合には、コストの大きさの観点から、公正証書遺言より自筆証書遺言が適していると考えられます。

 

第3 まとめ

このように、相続法の改正と自筆証書遺言の保管制度の創設に伴い、自筆証書遺言のデメリットが解消され、自筆証書遺言の利用が増加することと考えられます。もっとも、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを利用するにしても、その内容が相続人の方々にとって納得のいかない内容であった場合には、相続争いが発生してしまうこととなります。

そのため、遺言書を作成する際には、弁護士等の専門家に相談した上で、どのような内容・方式の遺言を作成するのかを、慎重に決定することが必要と考えられます。

 

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