非上場株の相続が判明したときに知っておきたい基礎知識を徹底解説
被相続人が死亡すると、相続人は遺産を相続します。遺産には、被相続人が所有していたすべての資産や負債が含まれるため、非上場株を所有していた場合は、こちらも相続することになります。 この時、いくつかの注意点を理解しておかなければいけません。なぜなら、非上場株はその他の資産と比べると、特殊な部分が存在するからです。 今回は非上場株を相続するときに知っておきたい基礎知識を徹底解説します。本記事を読めば、非上場株とは何か?という基礎的な部分はもちろん、非上場株の相続までの流れや相続したくない場合の対応、事業承継の際に活用したい特例に関する知識が分かるので、非上場株の相続が想定される方や、非上場株を相続した方は、ぜひご一読ください。
非上場株とは?
株式は大きく2つに分けることができます。それが「上場株」と「非上場株」です。2つの違いは市場で売買可能かどうかという点にあります。 上場株は、市場で売買できる株式のことで証券取引所にて売買することが可能です。上場株は、市場で自由に売買できるため流動性が高い一方、上場企業は市場における公平性を保つために情報公開義務を負うことになります。また、上場するには一定の条件を満たしたうえで、審査をクリアしなければいけないことも特徴の1つです。 一方、非上場株は市場で売買することができません。売買する際には、取引相手を自分で探さなければいけないので、流動性は低くなっています。ただし、情報公開義務がないため経営の自由度が高く、審査を受ける必要がないのが特徴です。 現在、日本の株式会社は圧倒的多数が非上場株となり、上場している企業は全体の0.1%程度といわれています。そのため、非上場株の相続は、それほど珍しいことではありません。
非上場株の相続が想定されるケース
前章で、非上場株の相続は、それほど珍しいことではないと紹介しました。では、どのような場合に非上場株を相続する可能性があるのでしょうか? ここからは、非上場株の相続が想定される代表的な3つのケースを見ていきましょう。
被相続人が株式会社の創業者や経営者の場合
被相続人が株式会社の創業者や経営者の場合は、基本的に非上場株を相続することになります。なぜなら、株式会社を所有するということは、株式を所有することを意味するからです。分かりやすくいえば、株式会社は株主のものであり、例え社長という役職についていても、株主(株を持っている状態)でなければ雇われ社長ということであり、経営の決定権を持つことはできません。 そのため、創業者や創業者から会社を引き継いだ子孫は非上場株を受け継ぐことになります。当然、遺産に非上場株が含まれている場合は、相続人は非上場株を相続することになるのです。
被相続人が会社の役員
株式会社によっては、役員に株式を分け与えているケースもあります。そのため、被相続人が上場していない株式会社の役員をしている場合も、遺産に非上場株が含まれていることも珍しくありません。 被相続人が会社の役員になっている場合は、非上場株を所有していないのかを確認しておきましょう。
被相続人が出資しているケース
株式会社を創業する時に出資すると、株式を所有することがあります。出資する代わりに株式を受け取ることになるので、被相続人が出資している場合は遺産に非上場株が含まれていることも珍しくありません。 そのため、被相続人が出資している企業がある場合は、遺産に非上場株が含まれていることがあるので、新会社設立に対して出資した過去がある場合は注意してください。
非上場株を相続した際に押さえておきたい3つのポイント
非上場株を相続した際には、以下のポイントを押さえておかなければいけません。なぜなら、これらのポイントを押さえておかなければ、相続したことを後悔する可能性があるからです。 相続で後悔しないためには、これらのポイントを理解したうえでの対応が大切になることを覚えておきましょう。
基本的に売却は難しい
非上場株は市場での売買ができません。そのため、売買する際は自ら取引相手を探す必要があります。しかし、非上場株を購入したいと考える人は、それほど多くないため基本的には売却が難しくなるのです。 そのため、将来的に売却することを目的に非上場株を相続する場合は、売却先が限られてしまう事を理解したうえで慎重に判断しなければいけません。
相続税の算出が複雑になる
非上場株もその他の遺産と同じように相続税の対象になります。ここでのポイントは評価額に応じた相続税がかかることです。 上場株であれば、市場価格を基に計算するため、相続税の算出はそれほど難しくなりません。しかし、非上場株は市場で取引されているわけではないので、具体的な価値を算出することが難しくなります。そのため、相続してから想像以上の相続税がかかってしまったという方も少なくありません。 特に、長年経営を続けている企業の場合は純資産が積み上がっていることで株式の評価額が想像以上に高くなっていることがあるので、多額の相続税が発生することがあります。 非上場株の相続税の算出は基本的に素人が簡単にできるものではないため、最初から税理士などの専門家に依頼して正確な相続税を把握したうえで判断しましょう。
非上場株式の評価方法
非上場株の評価方法は大きく分けると下記の2つに分類されます。 ・原則的評価方式 ・配当還元方式 ここからは、非上場株の2つの評価方法について詳しく見ていきましょう。
原則的評価方式
原則的評価方式は、会社の規模に応じて下記の3つの計算方法が用いられます。 ・大規模企業:類似業種比準方式 類似する上場企業の株価を基にして評価対象企業の株価を推定する方法です。最終的には、流動性の低さが考慮され、一定の調整が適用されます。 ・中規模企業:類似業種比準方式と純資産価額方式の併用 類似業種比準方式と純資産価額方式の2つを組み合わせた方式です。 ・小規模企業:純資産価額方式 対象企業が現時点で解散した場合、どれくらいの資産が残るのかを考慮して価値を算出する方法です。評価時点での純資産や負債を基に算出されるのですが、帳簿価格ではなく相続税法上の評価額に直して算出されます。 なお、被相続人や相続人の株式保有割合が一定を超える「同族株主」に該当する場合は「原則的評価方式」が用いられます。
配当還元方式
配当金の金額を基に評価額を算出する方法が配当還元方式です。同族株主に該当しない場合は、配当還元方式を使って価値が評価されます。
非上場株を相続する場合の流れ
相続を滞りなく終わらせるには、流れを理解しておくことも重要です。ここからは、非上場株を相続するまでの流れを詳しく見ていきましょう。
相続の事実を株式発行会社に申し出る
非上場株の相続前には、株式を発行する会社に相続の事実を申し出なければいけません。この申し出を行わずに勝手に相続することはできないので、この点は必ず忘れないようにしてください。 なお、申し出る時には遺言書の内容だけでなく、相続人であることを証明できる書類が必要になるので相続を決めた段階で事前に準備して備えておくようにしましょう。
非上場株式会社の株式評価の算出
相続前には相続税の計算を終わらせておくことも大切になります。正確な相続税を把握しておかなければ、相続段階になって資金の手当てが難しくなることもあるので、必ず事前に把握しておきましょう。 ただし、これまでにも解説してきた通り非上場株の相続税の計算は複雑になるうえに、相続人が複数人存在する場合は、遺産分割協議にも影響を与えます。そのため、税理士や会計士に依頼して正しい評価額を理解しておくことが大切です。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、遺産について誰が、何を、どのように分けるのかを話し合って決める手続きのことです。当然、非上場株も遺産に該当するので、誰がどの程度の割合で非上場株を相続するのかを明確にしておかなければいけません。 相続問題が深刻な問題に発展してしまうケースの中には、遺産分割協議が適切に実施されていなかったことが原因となることもあるので、以下の3点に注意しながら実施するようにしてください。 1. 遺産分割協議は相続人全員が参加のもとで実施する 2. 出席できない相続人がいる場合は、その相続人の意思を書面として残しておく 3. 協議は弁護士などの専門家に参加してもらったうえで進めていく 協議の結果は、書面に残したうえで相続人全員の実印を押しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。 中には、弁護士に依頼すると費用がかかるという理由で、自分たちだけで遺産分割協議を進めていかれる方もいらっしゃいますが、協議が難航すると問題が深刻化する恐れがあるだけでなく、調停に持ち込まれることになる可能性もあるので、トラブルを防ぐためにも最初から弁護士に依頼することをおすすめします。
株式名簿の書き換え
非上場株を相続したつもりでも、株式名簿の書き換えが行われていなければ権利を行使することはできません。そのため、非上場株を相続した相続人は非上場株の発行会社に株式名簿の書き換えを依頼する必要があります。この時、下記の書類が必要になるので株主名簿の書き換えを依頼する前に準備しておきましょう。 ・株式名義書換請求書兼株主票 ・株券 ・遺言書 ・印鑑証明書 ・戸籍謄本 ・遺言書 ・遺言書がない場合は、共同相続人同意書または遺産分割協議書
相続税の申告と納付
株主名簿の書き換えが終われば、相続税の申告と納付を行います。なお、相続税の納付は相続が発生した日から10か月以内に行わなければいけないので忘れないようにしてください。万が一、期限を過ぎてしまうと延滞料や利子が追加徴収されることになるので注意してください。
事業承継する場合は特例の活用で相続税が優遇される?
非上場株を相続すると、高額な相続税がかかります。そのため、事業承継を目的とした相続であっても、通常の相続税を支払うことになると経営が苦しくなる危険性があるのです。 このような事態を避けるために、国は「事業承継税制」という特例を設けています。 事業承継税制とは、事業を継続していくことと株式を売却しないという要件を満たした場合、事業の後継者に対して納税が猶予、または免除される制度のことです。 事業承継制度を活用した場合は、最初の5年間は毎年届出を行う必要があり、その後は3年ごとに届出が必要になるのですが、事業を継続していく場合は得られるメリットは決して小さくありません。 事業承継される場合は、資金繰りを悪化させないためにも制度を積極的に活用していきましょう。
非上場株を相続したくない場合の対応
ここまで読まれた方の中には、非上場株を相続したくないと考えられている方もいらっしゃるかもしれません。 そこで、ここからは非上場株を相続したくない場合の対応について見ていきましょう。
相続放棄
非上場株を相続したくない場合の選択肢として相続放棄があります。相続放棄は、相続に関する権利や義務を放棄する手続きのことです。ただし、相続放棄はすべての相続財産を放棄することを意味します。そのため、不動産や預貯金を相続したい場合は、相続放棄の選択は避けた方がいいでしょう。 なお、相続放棄を選択される場合は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければいけません。期限を過ぎてしまうと、単純承認といって相続を認めたと判断されることになるので、相続放棄を検討されている場合は期限があることを覚えておきましょう。
売却
押さえておきたい3つのポイントで解説したように、非上場株は基本的に売却が難しいことで知られているのですが、売却不可能というわけではありません。ただし、売却先が限られているのも事実です。では、誰に買い取ってもらうのが現実的なのでしょうか? 最も有力な売却先となるのが株を発行している会社です。しかし、発行会社が買い取りに消極的な場合もあるでしょう。このような場合は、既存の株主や第三者という選択肢が考えらえます。 ただし、非上場株の多くは「譲渡制限方式」となっているため、注意が必要です。譲渡制限株式とは、譲渡する際に会社の承認が必要になる株式のことで、承認が得られなければ譲渡することができません。ここまで読まれた方の中には、会社が承認しなければどうしようもないと考えた方もいらっしゃるでしょう。しかし、会社が譲渡を承認しない場合は、会社か会社が指定する指定買取人に対して買取を請求することができます。 売却を検討している場合は、弁護士に依頼することで会社との話し合いなどの手間を省くことができるので、売却を検討している場合は1度弁護士に相談してみましょう。
まとめ
非上場株も相続の対象になります。しかし、非上場株は市場で取引ができないので、流動性が低く、相続税の計算も複雑なので相続した場合は注意しなければいけません。 また、評価方法も素人が簡単に理解できるものではないため、後々のトラブルを防ぐためにも、弁護士などの専門家に相談したうえでの判断が重要です。 弁護士に相談と聞くと、費用面など経済的な負担を心配される方も多くいらっしゃいますが、弁護士事務所や法律事務所の中には無料相談を実施しているところも多く存在するので、まずは気軽に無料相談を活用してください。 非上場株を相続する場合は、基本的に事業承継されるケースが多くなります。滞りなく経営を継続していくためにも、早めの対応は欠かせません。少しでも不安がある場合は、早めに弁護士への相談を検討しましょう。
















