被相続人が韓国籍の場合の相続手続きについて
1 適用される法律を確認する!
被相続人の方が韓国籍の場合には韓国民法が適用されます。
法の適用に関する通則法36条は「相続は、被相続人の本国法による。」と定めています。
したがって、被相続人の方が韓国籍の場合には、韓国民法が適用されることになります。
ただし、遺言書に日本法を準拠法とするとの記載をした場合には、日本民法が適用されることになります。
2 相続に関する韓国民法と日本民法との違いを確認する!
相続に関する日本民法と韓国民法とでは、いくつかの違いがあります。
(1)相続人の順位と範囲
・韓国民法の場合
第1順位 配偶者と直系卑属
第2順位 配偶者と直系尊属
第3順位 配偶者(直系卑属・直系尊属がいない場合)
第4順位 兄弟姉妹(配偶者もいない場合)
第5順位 4親等いないの傍系血族(兄弟もいない場合)
・日本民法の場合
第1順位 配偶者と子
第2順位 配偶者と直系尊属
第3順位 配偶者と兄弟姉妹
(2) 代襲相続
・韓国民法の場合
被代襲者の配偶者も代襲相続します。
・日本民法の場合
被代襲者の配偶者は相続しません。
(3)配偶者の相続分(たとえば、配偶者と子2人が相続人の場合)
・韓国民法の場合(配偶者は直系卑属の5割加算)
配偶者:子:子=1.5:1:1=7分の3:7分の2:7分の2
・日本民法の場合(配偶者の相続分は2分の1)
配偶者:子:子=2分の1:4分の1:4分の1
(4)遺留分の割合
・韓国民法の場合
直系卑属 法定相続分の2分の1
配偶者 法定相続分の2分の1
直系尊属 法定相続分の3分の1
兄弟姉妹 法定相続分の3分の1
・日本民法の場合
直系尊属のみが相続人である場合 相続財産の3分の1
上記の場合以外の場合 相続財産の2分の1
兄弟姉妹には遺留分はありません。
(5)遺留分に関する権利行使の効果
・韓国民法の場合
遺留分権利者が贈与や遺贈によりその遺留分に不足が生じたときに、不足する限度内において財産の返還を求めることができます。
・日本民法の場合
遺留分に関する権利の行使により、金銭債権が発生します。
3 相続人を確定する!
相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得する必要があります。
被相続人が韓国籍の場合には、被相続人の出生から2007年12月31日までの間の韓国の除籍謄本と家族関係登録証明書、相続人の家族関係登録証明書を取得する必要がありますが、これらについては、相続人の方が韓国大使館か韓国領事館で手続きをされると、早期かつ勘弁に取得することができます。
なお、相続人の中に死亡されているものの韓国に死亡届を出されていない方がおられる場合は、閉鎖韓国人登録原票が必要になります。
また、日本語への翻訳が必要になりますが、翻訳については弊事務所で発注いたします。
4 相続財産を確定する(特に韓国国内に存在する財産の調査)!
遺言書があれば、相続財産がわかる場合があります。
預貯金については通帳やカードなど、不動産については固定資産税の課税証明書など、株式などについては証券や残高通知書などから調査します。
なお、韓国国内に存在する財産の調査については、不動産に関しては「先祖の土地探し」制度や、金融資産に関しては「相続人金融取引チョスあサービス」などがあるようです。
一方、債務についても、被相続人宛に届いた請求書やキャッシュカードなどから調査する必要があります。債務超過の場合は、相続放棄や限定承認の手続をするか検討することになります(手続きについては、6に記載しています)。
5 遺産分割の手続をする!
(1)まずは、当事者感で、遺産分割についての協議をします。
当事務所に委任していただければ、弁護士が他の相続人との間で協議をさせていただきます。
(2)当事者間での協議がまとまらなければ、家庭裁判所に調停を申し立てます。
家庭裁判所は、まずは、調停員を交えての協議をし、それでも協議がまとまらなければ、裁判官が審判手続きにおいて判断を示します。
6 相続放棄・限定承認の手続をする!
(1)相続放棄の手続
相続放棄をしようとする場合は、相続開始のあったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述する必要があります。
被相続人が日本国内に居住していた場合は、日本の家庭裁判所に相続放棄の申述をすることができますが、韓国国内に相続債務がある場合は、韓国の家庭法院にも相続放棄の届け出をする必要があります。
相続放棄の申述・届け出は、弊事務所で代行させていただきます。
(2)限定承認・特別限定承認の手続をする!
被相続人の債務の正確な額が分からず、債務超過のおそれがある場合は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務等を弁済する限定承認をすることができます。
なお、韓国民法では、相続開始のあったことを知った日から3ヶ月を経過した場合は限定承認はできませんが、相続人が債務超過の事実を重大な過失なしに知ることができなかった場合は、債務超過の事実を知った日から3ヶ月内に限定承認(特別限定承認)をすることができます。
また、共同相続の場合、日本民法では、相続人全員で限定承認の申述をすることが必要ですが、韓国民法では、単独で限定承認の届け出をすることができます。
限定承認の申述・届け出は、弊事務所で代行させていただきます。
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