自筆証書遺言を書くときのポイントとは?~方式緩和と保管制度を解説~

自筆証書遺言の書き方

 

自筆証書遺言とは、遺言者が自ら本文や日付や氏名を記入して作成する遺言のことを指します。

紙とペンさえあれば誰でも作ることができるため、遺言のなかでも親しみやすいものだと言えます。

 

しかし、従来の方法では全てを自筆で書かなくてはならなかったり、後から遺言に法的効力があるかを確認する作業が必要になったりと、作成者や相続人に大きな負担のかかる制度でした。

 

しかし、法改正により、自筆証書遺言の方式緩和や保管制度が創設されました。

本記事では、新しい制度を踏まえて、自筆証書遺言を書く時のポイントについて説明します。

特に多くの方が感じられる質問について、1つ1つ解説していきます。

 

自筆証書遺言の方式緩和

 

Q 自筆証書遺言の方式緩和、とは以前と何が変わったのですか?

A 遺言書の一部に関して、自書以外の方法で作成できるようになりました。

 

以前の規則では、遺言本文や、添付する財産目録に関して、全てを作成者が自書しなくてはなりませんでした。

しかし、方式緩和の後では、「財産目録に関しては自書以外でも構わない」というルールになりました。

この緩和により、財産目録に関しては

 

・パソコンで作成した書面

・不動産登記事項証明書や銀行の預金通帳の名義人記載欄及び残高部分のコピー

・遺言者以外の人が作成した書面

 

などを添付することが可能となりました。

 

※注意点

財産目録を自書以外の方式で添付する場合は、全てのページに遺言者の署名と押印が必要です。

ただし、署名と押印以外に決まった形式はありませんので、作成者のやりやすいように作ることができます。

 

補足

遺言書本文に押印された印と、財産目録に押印された印は、同一のものでなくても構いません。

 

Q 自書以外の方法で作成した財産目録を訂正するときはどうすれば良いですか?

A 自書により変更箇所を指示し、変更した旨を付記してこれに署名し、その変更の場所に印を押す必要があります。

 

自書以外の方法で作成した記載を訂正する場合も、自書で記載した部分を訂正する場合と方法は変わりません。

ただし、正しい方法で訂正しないと、遺言そのものの効力が生じないと判断される可能性があります。

確実に遺言を残したいと考えて折られるのであれば、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめいたします。

 

自筆証書遺言書の保管制度

 

Q 自筆証書遺言書の保管制度とはなんですか?

A 法務局に対して、遺言者が自ら作成した自筆証書遺言の保管申請を行える制度です。

 

保管申請は、遺言書保管所として指定された法務局に行います。

遺言書保管官は、遺言書の原本を保管し、さらにその遺言書の画像情報やその他の情報を磁気ディスクなどに保管して管理します。

 

保管制度を利用することで、

 

・相続人が遺言書の存在に気づかず、遺産分割協議を進めてしまうリスクを防げる

・複数の遺言書が作成されるリスクを防げる

・一部の相続人による遺言書の偽造・変造のリスクを防げる

 

といったメリットが得られます。

 

Q 保管制度を利用していると、遺言者が亡くなったあとはどうなりますか?

A 相続関係者が「遺言書情報証明書」の交付を請求できたり、原本の閲覧請求ができるようになります。

 

相続関係者(相続人・遺言執行者・権利関係者・遺言書に記載された者等)は、法務大臣が指定する全ての法務局に所属する遺言書保管官に対して、「遺言書情報証明書」の交付を請求できます。

また、遺言書を保管している法務局の遺言書保管官に対しては、遺言書原本の閲覧を請求ができます。

 

なお、相続人から交付や閲覧請求があった場合、他の相続関係者に、遺言書保管の事実が通知されます。

 

Q 保管制度の申請手続きはどのようなものですか?

A 遺言者自らが出頭しなくてはなりません。

 

保管制度の申請は、必ず遺言者本人が出頭する必要があります。代理人による申請はできません。

申請を受けた遺言書保管官は、遺言書が民法が定める方式に適合しているかどうかを確認し、所定の方法によって本人確認を行います。

 

病気などで手続きに本人が出向くことが難しい場合は、残念ながらこの制度を利用することができません。(ただし、本人以外の介助者が付き添いで同伴することについては問題ありません。)

 

Q 保管制度を利用した遺言は検認が必要ないと聞いたのですが?

A 不要です。

 

そもそも検認とは、家庭裁判所にて、発見された遺言書の状態や内容を確認/保存する手続きのことです。

自筆証書遺言は、相続人によって偽造や変造される恐れがあるので、トラブル防止のために、家庭裁判所に相続人が集まって内容を確認し、そのときの遺言書の内容を保存するのです。

 

ただし、相続人が集まって家庭裁判所に検認手続にいくのはなかなか面倒です。

自筆証書遺言書の保管制度を利用した場合は、検認手続は不要です。スムーズに相続手続きに取りかかれるのがメリットといえます。

 

Q 一度保管申請した遺言書の内容を変更したいときはどうすれば良いですか?

A 遺言書の保管の申請の撤回を行い、遺言書の返還を受けてください

 

一度保管申請した遺言書は、撤回手続きをすれば、遺言者の元に返還されます。返還を受けた上で内容の訂正を行い、再度保管の申請を行ってください。

撤回の手続きをしたからといって、遺言書の効力が無くなることはありませんので安心してください。

 

Q 保管制度を利用した遺言書は、必ず有効なのですか?

A 必ず有効とは限りません。保管申請をする前に、専門家へ相談することをおすすめします。

 

自筆証書遺言書の保管制度を利用すると申請の際に、遺言書が所定の形式に適合しているかどうかをチェックします。

多くの方がそれで安心してしまいますが、このチェックはあくまで形式的審査をするだけであり、遺言書に効力があるかなどを確定させるためのものではありません。

 

保管申請をしたときのチェックをクリアしたからといって、その遺言書に法的効力があるとは限らないのです。

 

法的に有効な遺言書を残したいのであれば、できれば事前に弁護士など法律の専門家に相談することをおすすめします。

たとえ、遺言書が法的に有効であったとしても、内容によって後ほどトラブルを生む可能性もあります。

 

弊事務所でも、「遺言書が出てきたが、随分前に作られたものであるせいいか、財産目録に書かれた現金資産と、実際に残された現金資産の額が全く違っており、相続人の間でもめている」といった相談をお受け付けしたことがございます。

 

ご自身が亡くなった後のことを考えて、できるだけトラブルが起こりにくい方法や遺言内容を考えるべきなのです。

 

Q 弁護士に遺言書に関する相談はできますか?

A 可能です。相続に関するご相談は、2回目まで無料でお受け付け致します。

 

弁護士にご相談いただけますと、

 

・有効な遺言作成のためのアドバイス

・トラブルにならない遺産分割を加味した遺言内容のアドバイス

・代理人として遺言を作成する

 

などのサービスを提供できます。

 

特に、遺言執行者に弁護士法人をお選びいただくと、遺言者の方が亡くなった後のトラブルを未然に防止できます(詳細については、「遺言執行は弁護士個人より弁護士法人を指定した方がリスクが低い」の記事を御覧ください)。

 

遺言書は、遺言者の方が自分の死後のトラブルを防ぐために作成するものですが、上手く活用できないとかえってトラブルの元となってしまいます。

 

弊事務所では、相続に関するご相談を積極的に受け付けておりますので、どうぞお気軽にご連絡ください。

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