農地相続で困るケースとは?農地相続で押さえておきたい基礎知識
相続財産に農地が含まれている場合は、基礎的な知識を身につけておかないことでトラブルに発展する危険性があります。特に、誰も農業経営を引き継がない場合は遺産協議が難航してトラブルに発展するケースも珍しくありません。そのため、農地を相続することが分かっている場合は、無用なトラブルを防ぐためにも、基礎的な知識を身につけておくことは重要です。
今回は、農地相続で困らないための基礎知識を徹底解説します。本記事を読めば農地を相続した時に必要な手続きや発生しやすいトラブル、農地相続時の対応やトラブル防止策が分かるので、農地を相続した方や、農地相続が予想される方、農地相続における概要を理解しておきたい方は、ぜひご一読ください。
農地を相続する前に知っておきたい基礎知識
農地を相続する前に理解しておかなければいけないことがあります。それが、農地は「農地法」の規制対象であるということです。農業は日本の食を支えるという意味で、重要な資源とされています。そのため、農地は農地法により規制されており、名義者であっても勝手に建物を建てたり売却したりすることができません。また、勝手に農業以外に使用することができないため、整地して駐車場として貸し出すこともできないように規制されています。これが、農地相続を難しくしている1つの原因です。
このような背景があるので、農家にとって農地は貴重な資源になる一方で、農家以外の人にとっては扱いに困る土地になりやすいという側面があるのです。農地を相続する前には、相続後に困ることがないように以上の事を理解しておかなければいけません。
農地を相続した時に必要な手続き
農地を相続した時は、以下の手続きが必要です。
・相続登記
・農業委員会への届出
どちらも実施しないことで大きな問題に発展する危険性があるので、農地を相続した場合は、必ず行うようにして下さい。
ここからは、農地を相続した時に必要な2つの手続きを詳しく見ていきましょう。
相続登記
不動産を相続した場合は、必ず相続登記(名義変更)を実施しなければいけません。これは、農地においても同様です。
以前は、相続登記が行われずに先祖名義のままの農地も存在していました。しかし、名義変更が行われていないと、売却ができなくなるだけでなく権利関係が複雑化することで活用も難しくなってしまう問題が指摘されてきました。こういった背景もあり、令和6年4月からは相続登記が義務化され、放置すると最大で10万円の過料(罰金)が科されることになったのです。
相続を知った日から3年以内の申請が義務付けられているので、相続した場合は早めの相続登記を心がけてください。なお、相続登記は必要書類を管轄の法務局に提出することで完了します。
農業員会への届出
農地を相続した場合は、農業委員会への届出が必要です。農業委員会への届出と聞くと、農家だけが行うものと誤解される方もいらっしゃいますが、農業を行っていない場合でも農地を相続した場合は届出が必要になります。
押さえておきたいポイントは、相続登記と農業委員会への届出は別物ということです。中には、相続登記をするだけで大丈夫と考える方もいらっしゃいますが、農業委員会への届出は相続登記とは別なので、必ず、両方を行わなければいけません。
なお、農業委員会への届出は相続を知った日から「概ね10か月以内」とされているので、農地を相続した方は、速やかに該当する市町村の農業委員会へ届出を行ってください。
農地相続で発生しやすい問題
農地が相続財産に含まれている場合、以下の問題が発生する可能性が高まります。
・遺産分割協議がまとまらない
・維持管理の問題
・相続税の問題
これらを放置しておくと、問題が深刻化するケースもあるので、理解したうえで対策を考えておくことが重要です。
ここでは、農地相続で発生しやすい代表的な問題について詳しく見ていきましょう。
遺産分割方法がまとまらない
相続における農地は、宅地などと比較すると評価が低くなりがちです。そのため、相続財産を分けたときに、農地を相続した相続人が他の相続人と同じくらいの財産を得ることになるケースがあります。
このような場合、分割割合に対して不満を抱く相続人がでてくる可能性があるのです。そのため、遺産分割協議がまとまりにくくなるケースがあるので、相続財産に農地が含まれている場合は、農地の評価が低くなりがちなことを全員で理解したうえで話し合わなければいけません。
また、遺産分割協議が難航したときに農地を複数人の相続人で分けるというケースがあります。しかし、このような場合は権利関係が複雑になることを理解しておかなければいけません。
維持管理の問題
農地は、農業を行っている人が相続人となれば農業を続けていくことで維持管理ができます。しかし、誰も農業を継続しない場合は耕作放棄地となり、荒れ地となってしまうことも珍しくありません。このような場合でも、近隣の農家に借り手がいれば維持管理をしてもらうことはできるのですが、最近では農業人口の減少もあり、借り手を見つけるのは難くなっているのが現実です。
農地を放置することで荒れ地になると、再び農業を開始するためには時間と手間がかかります。しかも、荒れ地になると鳥獣被害や害虫問題により近隣に迷惑をかける危険性もあるので、維持管理の問題は放置できるものではありません。農地を相続する前には、維持管理について考えておくことが重要です。
相続税の問題
農地は宅地などと比べると評価が低くなりがちですが、場合によっては高い評価額が設定されることがあります。特に、市街化区域内にあり転用が容易な農地は注意が必要です。
市街化区域内にあり転用が比較的簡単な農地は、ある程度の需要が見込まれるため、高い評価額が設定されることも珍しくありません。評価額が高くなれば、当然、相続税も高くなります。そのため、予想を上回る相続税が発生するケースがあるのです。
農地だからといって、必ずしも相続税が安いとは限らないことを覚えておきましょう。
農地を相続した場合の対応
農業を継続しない相続人が農地を相続した場合、下記の対応を取る人が多く存在します。
・売却
・転用
・相続放棄
・相続土地国庫貴族制度の利用
農業を行わない場合、農地を所有していても得られるメリットはほとんどありません。場合によっては、維持管理の手間と費用、固定資産税の支払いなどで想像以上の出費に悩む方もいらっしゃいます。だからこそ、農地の相続後にどのような選択肢があるのかを理解しておく必要があるのです。
ここからは、農地を相続した人が取る代表的な対応について詳しく見ていきましょう。
売却
農業を継続しない相続人が農地を相続した場合は売却も選択肢の1つです。しかし、農地は他の不動産と比べて需要がそれほど多くありません。そのため、売却するまでには、ある程度の時間がかかることがあります。
売却を検討している場合は、その他の不動産と同じように売却できると考えないことが大切です。売れない不安がある場合は、相続が確定する前に近隣の不動産会社に相談して、該当地域の農地需要を確認しておきましょう。
転用
農地を相続した場合は、転用も選択肢の1つです。ただし、自分で借り手を探すのは簡単なことではありません。なぜなら、農業人口は減り続けているうえに、農業を営んでいる人の高齢化が進んでいるからです。そのため、新たに農地を借りて規模を広げようと考える人は多くありません。
このような場合は、自治体やJAの仲介制度を活用してみるのも1つの方法です。仲介制度を利用した場合は仲介手数料が取られることになりますが、借り手を紹介してもらえる可能性があるので転用したい場合は利用を検討してください。
なお、農地を転用する際には農業委員会への許可申請が必要です。
相続放棄
場合によっては相続放棄も1つの方法です。ただし、ここで注意しなければいけないポイントがあります。それは、相続放棄はすべての相続財産が対象になるということです。
中には、農地だけ相続放棄すればいいと考える方もいらっしゃいますが、相続放棄はすべての相続財産に対して適用されるので、農地だけ放棄することはできません。
遺産を分割したときに、農地しか残らない場合や負債の方が多い場合は相続放棄も選択肢の1つになりますが、これらに該当しない場合は基本的に相続放棄を選択することはできないと考えておいてください。
相続土地国庫帰属制度の利用
農地を相続してもデメリットの方が大きいと感じた場合は、相続土地国庫帰属制度を利用するのも1つの方法です。相続土地国庫帰属制度とは、相続した特定の農地を国に帰属させられる制度のことです。ただし、すべての農地が対象になるわけではありません。特に、下記に該当する場合は引き取ってもらえない可能性が高くなります。
・建物がある農地
・権利が設定されている農地
・管理に多大な費用や労力がかかる農地
・他人による使用が予定されている農地
・境界が不明確な農地
・汚染された農地
・管理不全の農地
なお、建物がある農地においての建物には、農業用ハウスや物置のほか、古い作業小屋などが含まれます。
農地を相続して相続土地国庫帰属制度の利用を検討している場合は、引き取ってもらえない可能性があることは理解しておかなければいけません。
農地を相続して農業経営をする場合の注意点
農地相続を機会に農業を始めようと考える方がいらっしゃいます。しかし、農業を本格的に始めるには機械などの設備投資が必要です。新しく農業を始める場合は、この点を見落とさないでください
また、農業は手間や時間がかかるだけでなく、天候や気温などの外部要因によっても成果が左右されるため、未経験から始めた場合は採算が取れるようになるまでにある程度の期間がかかることも珍しくありません。農地を相続して農業を始める場合は、これらの事を理解したうえで慎重に判断してください。
農地相続におけるトラブル防止策
相続財産に農地が含まれている場合は、トラブルを防止するうえで下記の対策が有効になります。
・専門家への相談
・相続税の把握
ここからは、農地相続におけるトラブル防止策について詳しく見ていきましょう。
専門家への相談
農地相続におけるトラブル防止策の1つに専門家への相談があります。農地相続には、さまざまなトラブルの種が隠れています。場合によっては親族間の深刻な問題に発展する危険性があるので注意してください。そのため、相続財産に農地が含まれている場合は、親族間で話し合ったうえで弁護士への依頼を検討するのも1つの方法です。
弁護士などの専門家が第三者として間に入ることで、親族間における無用なトラブルを防止できるだけでなく、書類作成なども代行してくれるので法律に則して相続を進めることができます。
また、生前のうちに弁護士に相談するのも1つの方法です。事前に弁護士に相談しておくことで、早めに対策を行なえるだけでなく、選択肢を知ることで柔軟に考えることができます。
さらに、弁護士に相談することで遺言書の作成を行うことも可能です。弁護士の適切なアドバイスを基にして遺言書を作成することで、農地以外の相続財産についても被相続人の意思を反映することができます。
弁護士への相談と聞くと、費用面に不安を感じる方も少なくありませんが、弁護士事務所や法律事務所の中にはサービスの一環として無料相談を実施しているところも少なくありません。そのため、少しでも不安がある場合は、まずは無料相談の利用を検討してみましょう。
相続でトラブルに発展すると、問題が深刻化するだけでなく長期化するケースも珍しくありません。余計なストレスを抱えないためにも、親族間のトラブルを防ぐためにも不安がある場合は、弁護士への相談を検討しましょう。
事前に相続税額の試算を行う
農地相続におけるトラブルを防止するためには、事前に相続税額の試算を行っておくことが重要です。基本的に、農地は宅地などと比べると低い評価額になります。そのため、相続税額もそれほど高額になるケースは多くありません。しかし、農地は広さがあるうえに市街化区域内にあり転用が比較的簡単な場合は評価額が想定より高くなることがあります。このような場合、相続税額が想像以上に高くなることがあるので相続前にはトラブルを防止するためにも相続税額の試算を行うことが重要です。
相続前に相続税額を知ることができれば、相続前から対策を講じることができます。場合によっては、弁護士や会計士などから相続税を引き下げるためのアドバイスを受けることも可能です。
トラブルを防止するうえでも時間的な余裕は大切になるので、農地の相続予定がある場合は、早めに相続税額を把握して備えておきましょう。
まとめ
相続財産に農地が含まれている場合は、トラブルに発展する危険性があります。なぜなら、農地は宅地などと比べると売却しにくいうえに、維持管理が大変だからです。また、農地は「農地法」の規制対象になるので、名義者であっても勝手に農業以外に使用することができません。そういう意味でも、農家以外の人にとっては扱いに困る土地になりやすいのです。
また、相続においては農地の評価が低いため、遺産分割において不公平感を抱かれやすいという背景もあるので、遺産協議が難航するケースも珍しくありません。
このような状況を防ぐには、早めに専門家に相談することが重要です。弁護士などの専門家に相談することで、状況に合わせた適切なアドバイスを受けることができます。また、知らなかった選択肢を知れる可能性もあるので、後悔しないためにも早めの相談が重要です。
相続は、1度完了すると基本的にやり直すことができません。だからこそ、後悔しない状況を作ることが重要になるのです。
少しでも、不安が残る場合は無料相談を活用して、専門家の意見を聞いてみましょう。
















