相続人が行方不明!探し方と相続人調査とは?遺産分割協議について

相続が発生すると、相続人全員で遺産分割協議を行いすべての財産をどう分けるか決める必要があります。しかし、相続人の中に行方不明の人がいるという場合もあります。すべての法定相続人が揃わなければ手続きが進められないため、分割協議が停滞してしまうこともあります。

相続は人生で何度も経験するものではなく、法律や制度も難しく感じがちです。特に行方不明の相続人がいる場合は、普通よりも調査や手続きが増え、不安やストレスも大きくなります。

しかし、法律にはこのようなケースに対応する制度が用意されています。この記事では、相続人が行方不明になったときの探し方、相続人調査の方法、遺産分割協議ができない場合の対応、不在者財産管理人や失踪宣告の制度まで、素人の方にもわかりやすく解説します。

 

遺産分割協議をするためには相続人が全員必要

相続が発生すると、被相続人(亡くなった人)の財産をどう分けるかを決めるために、相続人全員で遺産分割協議を行います。この協議は、相続人が一人でも欠けていると成立せず行方不明の相続人がいると協議を進められません。

つまり、連絡が取れない人や、行方不明の相続人が一人いるだけで相続の手続きも話し合いもできないため故人の財産を一切使えないということになります。

法定相続人とは

法定相続人とは、法律で定められている「故人の財産を引き継ぐ人」のことです。配偶者は常に相続人となり、子ども、親、兄弟姉妹などが順位に応じて相続人になります。

誰が相続人かは、戸籍を調査することで確認できます。遺言書がある場合は、その内容に従って相続人や分け方が決まることもあります。

法定相続人に関しては、遺留分があるため遺言があったとしても一定の財産を引き継ぐ権利があります。

相続人が行方不明の場合は遺産分割協議ができない

遺産分割協議の際には、相続人全員の参加と同意が必要です。

そのため、相続人の中に行方不明者がいると、署名や押印ができず、協議自体が成立しません。会ったことがない人でも、遠方にいる場合でも必ず全員の同意が必要となります。

行方不明の相続人がいる場合に「会ったこともないしいないのと同じ」という認識で話を進めると、後から遺産分割協議を無効とされるリスクがあります。トラブルを防ぐためにも、行方不明の相続人を探して遺産分割協議をするのが原則となります。

 

相続人を探すための「相続人調査」とは

相続人調査とは、誰が相続人なのかを戸籍などの書類を使って確認する作業です。相続が発生した場合に最初に確認するべきことで、相続手続きの最初のステップです。そして、行方不明の相続人を探すときにここがスタート地点となります。

この調査をしっかり行わないと、後から新しい相続人が判明してトラブルになることもあります。時間と手間はかかりますが、相続を円満に進めるために欠かせない大切な作業です。

故人の戸籍を調べる

まずは、被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて集めます。これは役所に法定相続人が行くことで取得できます。

戸籍には、配偶者、子ども、親族などの情報が記載されており、そこから相続人が誰なのかが判明します。転籍している場合は、複数の市区町村から戸籍を取得する必要があります。

戸籍の住所から連絡をとる

戸籍や戸籍の附票を取得すると、相続人の住所がわかることがあります。

そこから手紙を送ったり、電話帳やインターネットで調査したりして、連絡を取れるか試みましょう。

それでも不明な場合は、探偵事務所などに相談する方法もあります。

遺産分割調停

相続人が見つかっても、折り返しの連絡がない場合や話し合いを拒否されている場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停では、裁判所の調停委員が間に入り、遺産分割の話し合いを進めます。

相手が調停にも応じない場合は、最終的に審判という形で裁判所が分け方を決めることもあります。ただし、行方不明のままでは調停や審判も進められないため次の手続きを取ることになります。

相続人が行方不明の場合は「不在者財産管理人選任」

どうしても相続人の所在がわからない場合は「不在者財産管理人」という制度を利用します。

この制度は、行方不明者の権利を守りながら、残された相続人が手続きを進められるようにするためのものです。

行方不明のままでは、遺産分割協議も、調停や審判も進めることができません。

そのため、裁判所が「行方不明者の代理人」を立てることで、手続きを前に進められるようにします。

行方不明だからといって以下のようなことをするとトラブルにつながります。

・行方不明者を無視して遺産を分ける

・署名や押印を勝手に作る

・「どうせ戻ってこない」と決めつける

・相談せずに独断で手続きを進める

これらはすべて、後から無効になったり、損害賠償問題に発展したりする危険があります。相続はスピード感よりも「正しく終わらせること」が大切なのです。

不在者財産管理人選任とは

不在者財産管理人選任という言葉はあまり聞き慣れないかもしれません。

この制度は、従来の住所や居所を離れていて、容易に戻る見込みのない者(不在者)について、申立てをすることで財産管理人を選任して財産の処分を行うことができるというものです。

選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存することができます。また、家庭裁判所から権限外行為の許可を得た上で、不在者に代わって、遺産分割や不動産の売却などの法律行為を行うことも可能です。

つまり、相続人が行方不明の場合でも、不在者財産管理人を選任すれば財産の処分ができるということです。

不在者財産管理人の目的

この制度は、行方不明者本人の利益を守ると同時に、周囲の人が不利益を受けないようにするための仕組みでもあります。

たとえば、相続人の中に行方不明の人がいると、遺産分割協議ができず、預貯金の解約や不動産の名義変更、相続税の申告など、あらゆる手続きが止まってしまいます。

そこで、不在者財産管理人を選任してもらうことで、その管理人が行方不明者の代理人のような立場になり、遺産分割協議に参加できるようになります。

ただし、不在者財産管理人は、勝手に財産を減らしたり、自由に処分したりできるわけではありません。

基本的には「本人の財産を減らさない」「本人の利益を守る」ことが一番の役割となります。不在者財産管理人は「行方不明者の代わりに財産を守る人」です。

不在者財産管理人を申請できる人

不在者財産管理人の選任を申し立てできるのは、行方不明者と法律上の利害関係がある人です。

・被相続人の配偶者

・ほかの相続人

・債権者(お金を貸している人など)

・そのほか法律上の利害関係者

・検察官

が選任の申し立てを行うことができます。誰でも申し立てができるわけではないため注意しましょう。

申立ては、行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)

・不在者の戸籍附票

・財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票

・不在の事実を証する資料

・不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)

・利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),賃貸借契約書写し,金銭消費貸借契約書写し等)

などが必要になるためあらかじめ準備しましょう。

申し立ての費用については、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。弁護士などに依頼した場合は依頼費用がかかります。

不在者財産管理人を選任してもゼロにはできない

不在者財産管理人が選ばれたからといって行方不明の相続人の相続分を侵害することはできません。行方不明であっても法律上の相続人である以上、権利はきちんと守られなければなりません。

不在者財産管理人は、行方不明の相続人の法定相続分を管理する人です。

・預貯金ならそのまま保管

・不動産なら売却せず維持

・必要な費用のみ支出

といった形で、本人のために財産を守ります。

行方不明だった相続人が現れた場合には、管理されていた財産を受け取ることができます。

ですので、行方不明だからと勝手に使ってしまったり、他の相続人で分けてしまったりすると、後から大きなトラブルや返還請求を受ける可能性があります。不在者財産管理人は、行方不明の相続人の相続分を使うための制度ではないのです。

法定相続分を守りつつ財産の処分が可能になるため、他の法定相続人にとってメリットがあります。ただし、他の相続人にとって有利な分け方には簡単に同意してくれないこともあります。

この制度は、全員の財産をまもるための制度と理解しておくことが大切です。

7年以上生死不明の場合は失踪宣告

相続人が7年以上生死不明の場合は「失踪宣告」という制度を使うことができます。

家庭裁判所に申し立てを行い、認められるとその人は法律上「死亡したもの」とみなされます。これにより、その人は相続人ではなくなり、残った相続人だけで遺産分割協議が可能になります。

失踪宣告にはふたつの種類があります。

・普通失踪:7年以上、生死不明

・特別失踪:事故や災害などで1年以上、生死不明

たとえば、災害や事故に巻き込まれた場合は、1年で申し立てができることもあります。

ただし、後から本人が生きていると判明するケースもあります。その場合は財産の返還などの問題が起こることもあるため慎重な判断が必要です。

遺産分割のトラブルは弁護士に相談する

行方不明の相続人がいる場合、遺産分割協議の手続きはとても複雑になります。

書類の取得、家庭裁判所への申立て、他の相続人との調整など、専門的な知識が必要になる場面も多くあります。

自分達だけで抱え込まずにまずは専門家に相談することが大切です。

行方不明の相続人がいても対応できる

弁護士や司法書士などの専門家に相談すれば、行方不明の相続人がいるケースでも、法律に沿った適切な対応を取ることができます。相続人調査の方法、不在者財産管理人の申立て、失踪宣告の手続きなども、状況に応じてサポートしてもらえます。

手続きの流れや必要書類についてもしっかりと整理してもらえるため、何から始めればよいかわからないというケースでも安心して進めることができます。

感情を抜きにして遺産分割ができる

相続は、家族や親族の感情が強くぶつかりやすい問題でもあります。当事者同士だけで話し合うと、過去の不満や感情が表に出てきたり、親族間の力関係が影響したりして話し合いがこじれてしまうこともあります。

第三者である専門家が間に入ることで、感情論ではなく法律やルールに基づいた冷静な話し合いが可能となります。特に行方不明の相続人がいる場合は手続きが複雑になるだけでなく「知らない人だしいいでしょう」「関係ない」といった感情が出てしまうこともあります。

ですが、感情論だけで話をすすめると後でトラブルになることもあります。

弁護士に依頼すれば費用はかかりますが、そのぶん、無用な対立を避け、スムーズに遺産分割を進めることにつながります。

まとめ

相続人が行方不明という場合は、遺産分割協議を他の法定相続人だけで勝手に進められません。遺産分割協議は必ずすべての相続人の同意が必要です。

ですので、まずは戸籍や住民票、戸籍の附票などを使って相続人調査を行い、連絡が取れるかを確認することが必要です。

それでも所在がわからない場合は、不在者財産管理人の選任や、条件を満たせば失踪宣告といった制度を利用します。

大切なのは、行方不明の相続人がいるけど「大丈夫でしょう」と決めつけて勝手に話を進めないことです。必ず相続人全員の権利を守りながら、法律に沿って手続きを進める必要があります。

手続きが難しいと感じたときは、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、正しい方法で相続手続きを進めていきましょう。

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