韓国国籍の方には戸籍がない~家族関係登録制度について~
韓国から戸籍制度が廃止されたことはご存知でしょうか。
韓国では、2005年の民法改正により、従来の「家」を中心に考える制度、いわゆる「戸主制」が廃止されることが確定しました。
そこで、戸主を中心に家単位で編製されていた戸籍をなくし、新しい制度として「家族関係登録制度」というものができました。
日本に住んでいらっしゃる在日韓国人の方のなかには、この「家族関係登録制度」について詳しく知っている方はまだまだ少ないです。
親類が亡くなるなどして相続が発生し、故人の戸籍を交付申請しようとして初めて気づく方もいるくらいです。
家族関係登録制度においては、これまで一つの戸籍に記載されていた事項が、いくつもの証明書に分かれて記載されています。
そのため、相続時にどの証明書が必要か分かりづらいのが現状です。
以下の表は、従来の韓国戸籍制度と新しい韓国家族関係登録制度を簡単に比べたものです。
従来の「韓国戸籍制度」 | 新しい「韓国家族関係登録制度」 |
戸籍(簿) | 家族関係登録(簿) |
戸籍謄・抄本(1種類) | 登録事項別証明書(5種類) |
本籍(地) | 登録基準地 |
転籍 | 登録基準地変更 |
就籍 | 家族関係登録創設 |
見ていただいたらわかるように、同じ内容を記載しているものでも名称が全く違います。
また、証明書の種類も増えているため、馴染みのない方には分かりづらいのが現状です。
本記事では、
○家族関係登録制度とは?
○5種類の証明書とその記載事項
○証明書の交付申請ができる人とは?
○交付申請の方法や場所は?
について説明します。相続に悩む在日韓国人の方の、少しでも助けになれば幸いです。
家族関係登録制度とは
家族関係登録制度とは、先程も説明しました通り、従来の戸主制に変わる新しい家族制度のことです。
この制度は、戸籍法に代わって制定された「家族関係登録等に関する法律」に基づいています。
この新しい法律は、2008年1月1日付けで施行されています。
戸籍制度を採用していたときは、日本の戸籍と同じように父・母・子などの身分関係は、戸主を中心に一つの戸籍にまとめられていました。
しかし、家族関係登録制度下においては、父・母・子など個人それぞれに1つずつ家族関係登録簿が編製されます。
家族関係登録簿には、登録基準地、姓名、本、性別、生年月日、住民登録番号、出生・婚姻・死亡などの家族関係に関する事項などが、いくつかの証明書に分かれて記載されます。
POINT~家族関係登録簿はどう編製される?~
家族関係登録簿は、従来の韓国戸籍に記載されていた内容を元に、コンピューターを利用して個別に自動作成されます。
よって、従来の韓国戸籍に記載されていた人が、変更手続きをしたり、申告をしたりする必要はありません。全て自動で手続きが行われます。
しかし、2008年1月1日以降に生まれた方には既存の戸籍がありません。その方は、出生申告によって、新しい家族関係登録簿が作成されます。
5つの証明書とその記載事項
家族関係登録簿は、いくつかの証明書に分かれています。具体的には
1:家族関係証明書
2:基本証明書
3:婚姻関係証明書
4:養子縁組関係証明書
5:親養子(特別養子)関係証明書
があります。
それぞれについて説明します。
家族関係証明書
本人及び、父母・養父母、配偶者、子(養子を含みます)の、
・姓名
・本
・生年月日
・住民登録番号
が記載されたものです。
ここで注意していただきたいのが、本人の兄弟姉妹は、家族関係証明書には記載されないということです。
兄弟姉妹との関係を証明するためには、本人の父母の家族関係証明書が必要です。
また、家族関係証明書は、現在有効な家族関係にある人だけを表示します。
基本証明書
本人に関して、
・婚姻
・養子縁組
・出生
・改名
・親権
・死亡
などの身分事項が記載されています。
他の証明書とは違って、登録基準地の指定や、変更または訂正に関する事項、家族関係登録簿の作成または閉鎖に関する事項も記載されます。
婚姻関係証明書
本人の婚姻や離婚に関する事項が記載されます。
この証明書の配偶者欄には、本人と現在有効な婚姻関係にある配偶者が記載されます。
養子縁組関係証明書
養子縁組、離縁、養子縁組無効・取消に関する事項が記載されます。
家族関係証明書では、養子を「子」と表示します。つまり、実子との区別はありません。
しかし、養子縁組関係証明書では、「養子」と表示されます。
親養子(特別養子)縁組関係証明書
親養子(特別養子)縁組、梨園、養子縁組無効・取消に関する事項が記載されます。
親養子入養制度とは?
親養子(特別養子)縁組とは、満15歳未満のものに対して、家庭法院(家庭裁判所)の親養子入養裁判を受けて親養子入養関係の認定を受ける制度です。
親養子は婚姻中の出生者とみなされるため、実父母との親族関係は消滅します。
証明書の交付申請ができる人
各種証明書の交付申請権があるのは、本人・配偶者・直系血族(父母、子など)・兄弟姉妹などです。
交付申請時に必要な書類として、本人の身分証があります。身分証は、
・外国人登録証明書
・在留カード
・特別永住者証明書
・韓国のパスポート
のうちいずれか1つです。
日本国籍を取得された方は、帰化の記録が載っている日本の戸籍謄本のコピーと、運転免許証か日本のパスポートのコピーを利用することができます。
代理人が交付申請をする場合は、上記の本人身分証に加え、代理人の身分証のコピーと委任状が必要です。
交付申請をする場所と方法
各種証明書の交付申請は、韓国内の役所または一定の在外公館に提出して行うのが一般的です。
日本では、現在
・大使館領事部
・大阪総領事館
・福岡総領事館
で申請をすることが可能です。
ただし、現時点で外国人が在外公館で証明書を請求する方法は決められていません。よって、外国人が在外公館で証明書を申請することはできません。
在外公館へ行くのが難しい場合は、韓国の役所に郵送での証明書送付を請求することもできます。しかし、こちらも外国人による交付申請はできないので注意してください。
まとめ
本記事では、韓国の民法改正に伴って新しく創設された「家族関係登録制度」とはなにか、また、各種証明書を請求するにはどうすればを説明しました。
在日韓国人の方の場合、相続は韓国の法律が適用されます。そのため、日本人の方が相続をする場合より、複雑な手続きが必要となります。
手続きを円滑にすすめていくには、日本の法律と韓国の法律どちらにも明るい専門家に依頼することが重要です。
弊事務所には、これまで在日韓国人の方の相続問題の解決経験がございます。実際に韓国籍の方の相続問題を解決した事例については、「渉外遺産相談→相続と準拠法がテーマとなった事案」をごらんください。
初回相談料は無料です。相続についてお悩みの方に、お気軽にご相談頂ければと思います。
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