【在日韓国人の相続/相続放棄】
【在日韓国人の相続/相続放棄】
1 事案
2 準拠法
3 相続放棄
- 制度趣旨
- 相続放棄の時期
在日韓国人の相続/相続放棄
- 事案
在日韓国人の父が亡くなって3か月が経ちましたが、父が生前、日本と韓国で借金があることが1か月前に判明しました。Aさんは、どのように対処すればいいでしょうか。
- 準拠法
「法の適用に関する通則法36条」は、相続問題は被相続人の本国法によると定められています。そして、「相続放棄」に関する問題も「相続」問題なので、韓国民法により判断されます。
- 相続放棄
- 制度趣旨
相続人は被相続人の死亡により開始し、相続人は相続が開始したときから被相続人の財産に関する包括的な権利義務を特別な方式を経ることなく承継します。これにより、負債まで承継することになります。
しかし、資産を上回る負債を相続することを強制するのは妥当ではありません。そこで、一定の手続を履行することで、資産を含む一切の相続財産から自由になるため、相続放棄制度が認められています。
- 相続放棄の時期
韓国民法は、「相続人は、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に単純承継若しくは限定承認又は放棄することができる。ただし、その期間は、利害関係人又は検事の請求によって、家庭裁判所がこれを延長することができる。」と規定しています。
「相続の開始があったことを知った日」とは、「相続開始の原因となる事実の発生を知ることによって自己が相続人になったことを知った日」を意味します。
- 相続放棄の方式/裁判管轄
韓国民法は、「相続人が相続を放棄するには(前述)の期間内に家庭裁判所に放棄の申告をしなければならない。」と定められています。
相続放棄の申告は、相続財産所在地の裁判所に申告しなければなりません。したがって、日本と韓国とでどちらにも相続財産がある場合、両国の裁判所で手続する必要があります。
韓国に住所がない場合、大法院所在地の家庭裁判所であるソウル家庭法院に申述することになります。
- 相続放棄の効果
相続の放棄は、相続開始時に遡及してその効力が生じます。そのため、一度も相続人となっていないこととなります。
相続放棄は代襲相続の原因にはなりませんが、子が全員相続放棄した場合、孫が第一順位の本位相続人となることに注意が必要です。
- 放棄財産の管理
相続を放棄した者は、その放棄により相続人となったものが相続財産を管理することができるときまで、その財産を固有財産に対するものと同一の注意をもって管理しなければなりません。
- 本件では
- 借金の相続
借金も相続財産に含まれますから、Aさんが借金を免れるためには限定承認か相続放棄の申述をする必要があります。
- 相続放棄
Aさんは、重大な過失なく借金の存在を知らなかったので、借金の存在をしったときから3か月以内に裁判所に申述しなければなりません。
Aさんの父の借金は日本と韓国のどちらにもあるため日本と韓国とで別に申述する必要があります。