【在日韓国人の相続/法定相続分】
【在日韓国人の相続/法定相続分】
1 事案
2 準拠法
3 法定相続分
4 代襲相続人の相続分
5 相続分の計算
6 本件では
在日韓国人の相続/法定相続分
- 事案
Aさんの夫は、子を残して2年前に亡くなり、最近、夫の母もなくなりました。Aさんは、夫の父と子と一緒に夫の父名義の家で一緒に生活しています。夫には姉が1人おり、夫の家族は全員在日韓国人です。夫の母の相続について相続分はどうなるのでしょうか。
- 準拠法
相続では、被相続人の本国法になっているので、韓国民法が適用されます。
- 法定相続分
相続分とは、全相続財産に対する観念的・分量的な一部をいいます。被相続人の遺言で決定される指定相続分と、法律の規定によって決定される法定相続分とがあります。
被相続人が共同相続人の相続分を遺言によって指定しなかったときは、法定相続分となります。
法定相続分について、韓国民法は、同順位の相続人が数人いる場合は、その相続分はすべて均等とし、配偶者についてのみ5割を加算するとしています。
- 代襲相続人の相続分
代襲相続人の相続分は、死亡または欠格となった被代襲相続人の相続分となります。
そして、被代襲相続人の直系卑属が数人いる場合および子と配偶者がいる場合は、被代襲相続人の相続分を、代襲相続人の法定相続分により算定されます。
また、韓国では配偶者も代襲相続人となります。相続開始前に死亡したり、相続欠格となった者の配偶者は、直系卑属と同じ順位で被代襲者に代襲して共同相続人となります。
上記のケースの場合、夫の母の相続人は、夫の父(被相続人の配偶者)、夫、夫の姉の3人です。が、夫は既に亡くなっているので、代襲相続が発生します。
日本であれば、代襲相続人は被相続人の直系卑属、あるいは被相続人の甥、姪となります。よって、日本の法律に則るのであれば、このAさんの夫の母が亡くなったとき、Aさんの夫が相続するはずであった分を、Aさんの子供(被相続人から見て孫)が代襲相続することとなります。
しかし、韓国民法においては、配偶者も代襲相続人となります。よって、夫の母が亡くなったときの代襲相続人は、AさんとAさんの子の2人となります。
- 相続分の計算例
- 死亡した夫婦の一方を被相続人として、その配偶者と子が1人いる場合
法定相続分の割合は、
配偶者:子=1.5:1(3:2)
となります。
分数で表せば、配偶者5分の3、子5分の2です。
- 死亡した夫婦の一方を被相続人として、その配偶者と子が2人いる場合
法定相続分の割合は、
配偶者:子:子=1.5:1:1(3:2:2)
となります。
分数で表せば、
配偶者7分の3、子7分の2、子7分の2です。
- 死亡した夫婦の一方を被相続人として、その配偶者・長男・既に死亡した次男の配偶者と子1人がいる場合
法定相続分の割合は、
配偶者:長男:亡き次男=1.5:1:1(3:2:2)
となり、
亡き次男の配偶者と子は、亡き次男の相続分1について、
配偶者:子=1.5:1(3:2)
の割合で代襲相続します。
したがって、
配偶者:長男:次男の配偶者:次男の子=15:10:6:4
となり、分数で表せば、
配偶者35分の15、長男35分の10、次男の配偶者35分の6、次男の子35分の4となる。
- 死亡した夫婦の一方を被相続人として、その配偶者・長男・相続放棄した次男の配偶者と子1人がいる場合
次男は相続放棄していますが、相続放棄は代襲相続の事由とされていませんので、次男の配偶者と子は代襲相続人とはなりません。
また、次男の子は被相続人の直系卑属ですが、親等がより近い長男が相続人となり、次男の子は相続人とはなりません。
したがって、配偶者と長男だけが法定相続人となります。そして、法定相続分の割合は、
配偶者:子=1.5:1(3:2)
となります。
分数で表せば、
配偶者5分の3、子5分の2です。
- 本記事冒頭の事案では
本件では、夫の父が被相続人の配偶者として、夫の姉が被相続人の直系卑属として相続人となります。また、Aさんと亡き夫の子は被相続人の直系卑属ですが、親等がより近い夫の姉が相続人となり、Aさんと亡き夫の子は相続人とはなりません。そして、Aさん、Aさんと亡き夫の子は夫の相続分を代襲相続します。
法定相続分の割合は、
配偶者である夫の父:夫の姉:亡き夫=1.5:1:1(3:2:2)
となり、
亡き夫の配偶者であるAさんと亡き夫の子は、亡き夫の相続分1について、
配偶者:子=1.5:1(3:2)
の割合で代襲相続します。
したがって、
配偶者である夫の母:夫の姉:Aさん:Aさんと亡き夫の子
=15:10:6:4
となり、
分数で表せば、
夫の母35分の15、夫の姉35分の10、Aさん35分の6、Aさんと亡き夫の子35分の4
となります。