【在日韓国人の相続/寄与分】
【在日韓国人の相続/寄与分】
1 事案
2 準拠法
3 寄与分/韓国法制度
- 寄与分権利者の範囲
- 寄与分の内容
- 寄与分の決定
- 具体的相続分
- 寄与分と遺贈
4 本件では
在日韓国人の相続/寄与分
- 事案
Aさんは、在日韓国人の父、母、弟の4人家族で、父が亡くなるまでの10年間は父と母と同居し、父の介護をしていました。父の遺産は、1億ですが、預金3000万円は母に遺贈されています。Aさんは、遺産分割協議において平等に相続するのは父の介護をしていたことを考えるとかえって不公平だと考えています。このとき、法律ではどのようになっているのでしょうか。
- 準拠法
「法の適用に関する通則法36条」は、相続問題は被相続人の本国法によると定めており、「寄与分」に関する問題も「相続」問題に含まれますので、被相続人の本国法である韓国民法によって判断されます。
- 寄与分/韓国法制度
寄与分制度は、共同相続人の中の特定の相続人が相続財産の維持又は、増加に貢献した場合に、共同相続人間の公平を図るための制度です。
- 寄与分権利者の範囲
寄与分権利者は共同相続人でなければなりません。
- 寄与分の内容
韓国民法は、寄与分について、「共同相続人の中に相当な期間、同居・看護その他の方法により被相続人を特別に扶養したり、被相続人の財産の維持又は増加に特別な寄与をしたりしたもの」と定めています。
なお、配偶者から看護を受けたとしても夫婦間の扶養義務履行の一環に過ぎず、個人の相続財産の取得に特別に寄与したものとみることはできないとされています。
- 寄与分の決定
まず、共同相続人間で協議して寄与分を定めますが、協議によって決定できなかった場合、家庭裁判者が寄与者の請求により寄与の時期、方法及び程度と相続財産の額その他の事情を参酌して寄与分を定めることになっています。
- 具体的相続分
相続開始時の被相続人の財産価格から、共同相続人間の協議ないし調停・審判により定まったその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、法定相続分により算定した相続分に寄与分を加算した額をもって、その者の相続分としています。
- 寄与分と遺贈
寄与分は、相続が開始したときの被相続人の財産価格から遺贈の価額を控除した額を超えることができません。
- 本件では
- 寄与分の有無
Aさんの10年間の同居扶養は、寄与分に該当する可能性がありますので、母及び弟と協議を行って寄与分を決めるか、家庭裁判所の調停ないし審判で決定してもらう必要があります。
- 具体的相続分の決定
法定相続人は、配偶者および直系卑属であるため、母、A、弟の3人です。
そして、3人の法定相続分は、
母:A:弟=1.5:1:1
であり、分数では、
母が7分の3、Aが7分の2、弟が7分の2
となります。
母に対する遺贈は、特別受益に該当するので、Aさんの寄与分が3000万円認められたと仮定した場合、具体的相続分の算定は、以下のとおりになります。
遺産は1億円ですが、寄与分3000万円が控除され、遺贈は持ち戻しますので、みなし相続財産は、1億円から3000万円を控除した7000万円となります。これに各人の法定相続分を乗じると、
母 7000万円×7分の3=3000万円
A 7000万円×7分の2=2000万円
弟 7000万円×7分の2=2000万円
となります。
母は、すでに3000万円遺贈されているため、相続分は発生しません。Aさんは、寄与分3000万円に加えて2000万円相続し、合わせて5000万円になります。弟は、2000万円相続します。