土地相続時に知っておきたい共有名義の基礎知識と注意点
相続時に土地などの不動産を相続することは珍しくありません。しかし、土地などの不動産は分割が難しいため、相続時や相続後にトラブルに発展する危険性があります。このような事態を避けるためには、相続時に正しい知識を身につけておくことが重要です。
今回は、土地相続時に知っておきたい共有名義の基礎知識と注意点について詳しく解説します。本記事を読むと、共有名義のメリットやデメリットだけでなく、相続時に知っておきたい土地共有名義に関する基礎知識と注意点、トラブルを防ぐための具体的な方法が分かるので、土地を相続される予定の方や、相続時のトラブルを避けたい方は、ぜひご一読ください。
土地の共有名義とは
土地の共有名義とは、名前の通り1つの土地を複数人で共同所有する形態のことです。共同名義人は、共有持分として割合(持分)の権利を持つため、登記簿にも記載されます。
例えば、夫婦や親子でペアローンを活用して家を購入した場合は、原則的に購入した家は共有名義になります。また、相続発生時に土地などの不動産がある場合は、分割が難しいので、兄弟など相続人の共有名義として相続することも珍しくありません。なお、共有持分の割合に関しては、土地購入時に支払った金額や相続割合に応じて決まります。
近年では、土地の共有名義は決して珍しいことではありません。ただし、メリットとデメリットを理解したうえで判断することが重要になります。なぜなら、基礎知識を知らないまま共有名義にしてしまい、後にトラブルに発展してしまうケースも少なくないからです。
そのため、メリットとデメリットを正しく理解したうえでの判断が重要になります。次章からは、土地を共有名義にするメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
土地を共有名義にするメリット
土地を共有名義にする代表的なメリットには下記のものが存在します。
・住宅ローン控除
・借入額の増加
・売却時の税控除
・相続税の節税
・相続時の公平な分割
まずは、土地を共有名義にするメリットについて詳しく見ていきましょう。
住宅ローン控除
住宅ローン控除(住宅借入金等特別税額控除)は、個人の所得税から直接差し引く「税額控除」の制度です(租税特別措置法 第41条 第1項)。
住宅を共有名義で購入したときは、購入時に各共有者が住宅ローン控除を受けることができます。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用したときに受けられる優遇制度で、夫婦の共有名義の場合は夫婦ともに制度の活用が可能です。そのため、共有名義にすることで単独名義の場合より大きな節税効果が期待できます。ただし、税制は定期的な改正があるので、共有名義による税負担の軽減を目指す場合は、最新の情報確認を忘れないでください。
借入額の増加
夫婦でペアローンを組む場合は、夫婦の収入を合算したうえで審査を受けることができるので、単独名義に比べると高額なローンを組みやすくなります。予算範囲が広がるため、ワンランク上のマイホームを目指せるのは大きなメリットです。
売却時の税控除
居住用財産を売却したとき、一定の条件を満たすと所有期間に関係なく譲渡益から最高で3,000万円控除できる特例:譲渡所得税(所得税・住民税 租税特別措置法 第31条の3 第1項)が存在します。この特例は、共有者1名につき最高3,000万円控除できるので、共有名義の場合は人数分の控除を受けることが可能です。
例えば、夫婦の共有名義の場合は夫の3,000万円と妻の3,000万円で合計6,000万円の控除を受けることができます。
相続税の節税
単独名義の不動産を相続した場合、相続時には不動産価値のすべてが課税対象になります。しかし、共有名義の場合は、課税対象が被相続人の持分のみになるので、単独名義のときよりも相続税を節約することが可能です。
相続時の公平な分割
土地などの不動産を相続した際は、共有名義にすることで不動産を公平に分割できます。共有名義にすることで売却することなく公平な状態を作ることが可能です。しかし、公平性を維持できる一方で売却が難しくなるという問題もあるので、その点は考慮しておかなければいけません。詳しくは、次章のデメリットで解説するので共有名義での相続を検討している場合はデメリットも理解したうえでの判断が重要です。
なお、遺産分割協議が進まない場合は、一時的に共有名義にしておくという方法も存在するので、遺産分割協議が難航している場合は1つの選択肢として検討しましょう。
土地を共有名義にするデメリット
共有名義にはメリットだけでなくデメリットも存在します。このデメリットを理解しないまま共有名義を選択すると、後悔に繋がるだけでなくトラブルに発展する危険性があるので理解しておかなければいけません。
ここからは、土地を共有名義にするデメリットについて詳しく見ていきましょう。
売却や活用が難しくなる
共有名義の不動産は処分や売却が難しくなります。なぜなら、基本的に建て替えや売却する際には共有者全員の合意が必要になるからです。
例えば、不動産を売却したくても共有者の1人が反対すれば売却はできません。これは、取り壊しや増改築も同様です。
また、不動産を有効活用するために賃貸借などを行う場合は過半数の合意が必要になります。当然ですが、過半数の合意が得られない場合は賃貸借を行うことはできません。
意見の食い違いによって、共有者同士の関係性がこじれる危険性があるため、将来的に売却や活用を検討しているのであれば、早めに対策を考えておきましょう。
権利関係の複雑化
共有名義の不動産に相続が発生した場合、権利関係が複雑になることもデメリットの1つです。
例えば、共有者の1人が亡くなった場合で考えてみましょう。
共有者が亡くなると、共有者の持ち分は共有者の妻や子どもに相続されます。このような事態になったとき、不動産の売却や活用が難しくなる可能性が高くなるので注意しなければいけません。
共有者同士で話ができていても、新たな相続人が共有者の意思まで引き継ぐわけではないので、その点は考慮しておく必要があります。
また、関係性が疎遠な場合は連絡が取れないケースも珍しくありません。権利関係が複雑化すると、不動産の取り扱いがより難しくなるのは大きなデメリットです。
維持管理など負担割合の問題
共有名義の場合、維持管理などの負担割合が問題となることもデメリットの1つです。原則的に、共有名義の不動産にかかる固定資産税や維持管理費は持分割合に応じて負担することになります。しかし、相続後に共有者の1人が不動産に住んで、残りの共有者は別の場所に住むことも珍しくありません。このような場合、持分割合に関係なく居住者以外が費用を負担することに対して不公平感を抱くケースがあります。
特に、大幅な修繕が必要になったときは、誰がどれくらいの費用を負担するのかが問題となりトラブルに発展することもあるので注意が必要です。
また、事前に固定資産税や維持管理費の支払い割合を決めていても、共有者が支払いを滞る危険性もあるので、その点も考慮しておく必要があります。
共有名義の場合、固定資産税や維持管理費の支払いを滞ったからといって、簡単に名義から外すことはできないので、事前に取り決めを行い書面に残しておくことも重要です。
共有名義の土地があることで起こったトラブル
共有名義の不動産によりトラブルが発生することは決して珍しくありません。実際、相続時に土地を共有名義にしたことを後悔している方は多く存在します。では、どのようなトラブルが発生しているのでしょうか?
ここでは、共有名義が原因で起こったトラブルについて見ていきましょう。
単独使用
相続した家を相続人全員の共有名義にすることは珍しくありません。このような場合、相続人の1人が共有名義の家に住むことがあります。ここで重要なポイントになるのが他の共有者の同意がなくても住むことができる点です(民法第249条第1項): 「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」しかも、このような場合でも法律では違法とされていないので他の共有者は明け渡しを求めることができません。
持分に応じた賃料を他の共有者に支払う義務はあります条文(民法第249条第2項): 「共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。」しかし、このような場合も賃料を巡るトラブルに発展するケースは多く存在します。
共有名義の不動産を単独使用することでトラブルが起こる危険性があることは理解しておかなければいけません。
金銭トラブル
不動産を所有すると、固定資産税や維持管理費が必要になります。どちらも持分割合に応じて支払う義務があるのですが、納付書がすべての名義人に送られるわけではありません。
基本的に固定資産税の納付は代表者1名が行うので、誰かが支払わなかった場合は代表者が負担することになります。
このような金銭トラブルに発生すると問題が長期化するだけでなく、共有者間の人間関係が壊れる危険性があるので、その点を考慮したうえで対策を考えることが重要です。共有者同士の人間関係が壊れてしまうと、処分や活用がより難しくなるので、話がこじれそうな場合は早めに弁護士などの専門家に相談することが大切になります。
弁護士に相談と聞くと、費用面を心配される方もいらっしゃいますが、弁護士事務所や法律事務所の中には無料相談を実施しているところもあるので、少しでも不安な場合は無料相談の活用を検討してください。
管理トラブル
不動産は手入れをしないと、さまざまなトラブルが発生します。雑草などを放置すると虫が発生して近隣に迷惑をかけるだけでなく、適切に維持管理しなければ家屋倒壊などの危険性もあります。そのため、共有名義の場合は誰が管理するのかを明確にしておかなければいけません。管理方法を巡るトラブルが発生すると、不動産がそのまま放置されるケースもあるので注意してください。
放置した結果、近隣に迷惑をかけることになればトラブルが拡大する恐れもあります。実際、近隣住民を巻き込むトラブルに発展するケースは少なくないので、後々のことを考慮しながら対策を考えていきましょう。
土地相続時に知っておきたいトラブル回避方法
不動産を共有名義にしたことで起こるトラブルは少なくありません。このような事態を避けるためには回避方法を知っておくことが重要です。
ここからは、共有名義によるトラブルを回避する方法について詳しく解説します。
代償分割
相続時に代償分割することで、不動産を単独名義にできます。代償分割とは、相続人の1人が土地などの不動産を相続する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う分割方法です。
代償金を支払う必要があるので、経済的な負担は大きくなりますが、不動産を単独名義で相続できるのでトラブルを防げるだけでなく、処分の際には自分の意思だけで判断できます。
ちなみに、被相続人と同居していた相続人が不動産を引き継ぐ場合は代償分割が用いられることが多くなっています。
換価分割
不動産を残す必要がない場合は、換価分割も選択肢の1つです。換価分割とは、不動産を売却して、売却代金を相続人全員で分けるので、最も公平に分割できる方法といえます。
なお、換価分割を選択する場合は遺産分割協議書に換価分割する旨と売却代金の分配割合を明記しておくと贈与を疑わたり、売却代金を巡るトラブルに発展するリスクを抑えることが可能です。無駄な贈与税を支払わないためにも、無用なトラブルを防ぐためにも換価分割の際には遺産分割協議書に明記しておきましょう。
分筆登記
分筆登記することで、各相続人が不動産を単独所有することが可能です。分筆登記とは、登記簿上で1つとされている土地を複数の土地に分けて登記することを指します。分筆することで公平に土地を相続できるだけでなく、各相続人がそれぞれの持分を単独所有することが可能です。
ただし、土地の広さによっては土地面積が小さくなることで売却しにくくなるデメリットがあるので、状況に応じた選択が重要になります。また、土地面積や形状によっては資産価値が落ちることも考慮しておかなければいけません。
相続放棄
トラブルを防ぐという意味では相続放棄も選択肢の1つです。相続放棄は、文字通り相続を放棄することになるので、不動産を相続することはありません。ただし、不動産以外の財産も放棄することになるので、こちらも状況に合わせた選択が重要です。
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
まとめ
共有名義はメリットだけでなくデメリットも存在します。そのため、相続財産に土地が含まれていても安易な考えで共有名義にしないことが重要です。メリットとデメリットを理解したうえで状況に合わせて判断してください。
ただし、相続が発生した段階では冷静な判断ができないのも事実です。ここで大切になるのが専門家のアドバイスです。相続時に少しでも不安を感じた場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に依頼することで、状況に応じたアドバイスを受けられるだけでなく、面倒な手続きを代行してもらうことが可能です。
また、当事者同士では進まない話し合いも第三者の専門家が間に入ることでスムーズに進めることができるだけでなく、相続人同士の感情のぶつかり合いを避けることができるので無用なトラブルを防ぐことができます。
相続問題は1度こじれてしまうと解決までに多くの時間がかかることも珍しくありません。無用なトラブルを避けるためにも、相続に関する不安が少しでもある場合は早めの相談を検討してください。
















